1〜3月期GDPのインプリケーション(H24.5.18)


【最終需要の動向はほぼ予測通り】
 5月17日(木)に公表された12年1〜3月期のGDP統計(1次速報値)によると、実質成長率は前期比+1.0%(年率+4.1%)と事前の予測の上限値(+3.5%)を大きく上回った。
 しかし、最終需要の中身を点検してみると、家計消費(成長寄与度+0.5%)と公共投資(同+0.3%)が大きく増加し、純輸出のマイナスの成長寄与度が消えたこと(10〜12月期は−0.7%、1〜3月期は+0.1%)、反面設備投資が前期比−3.9%の減少に転じたことは、事前の予測通りであった。住宅投資が増加せず、前期比−1.6%の減少となったことは、大方の予測と異なったが、その成長寄与度は小さく(−0.0%)、大勢に影響はない。新設住宅着工戸数は前期比+8.3%の増加なので、この分は4〜6月期の住宅投資増加に反映されるであろう(以上、このHPの<月例景気見通し>2012年5月版参照)。

【在庫投資の上振れが成長率を高めた】
 このように、最終需要項目の予測はほぼ的中しているにも拘らず、成長率が予測を大きく上回ったのは、中間需要、すなわち民間在庫投資の成長寄与度が、10〜12月期の−0.4%から1〜3月期は+0.4%へ、差し引き+0.8%も上振れしたためである。
 最終需要だけであれば、1〜3月期は+0.6%(年率+2.4%)の成長率であり、ほぼ予測の下限に相当する。これに若干の在庫投資を加味すれば、予測の2.5〜3.5%の範囲に収まる。


 このような在庫投資の大きな振れは、11年11月のタイ大洪水に伴うサプライ・チェーンの切断で、10〜12月中の国内在庫が激減し、それが1〜3月期に復元したためと想像される。もっとも、法人企業統計の在庫投資には、そのような大きな振れは認められないので、統計作成にやや疑問が残る(このHPの<最新コメント>“10〜12月期マイナス成長(−0.6%)の半分は一時的な在庫投資の落ち込みによる”H24.2.13参照)。

【11年度の成長率は公的見通しをやや上回る−0.0%、12年度は予断を許さず】
 1〜3月期の成長率が比較的高い伸びとなったため、2011(平成23)年度の平均成長率は−0.0%の横這いとなり、政府見通し(−0.1%)や日銀政策委員見通し(−0.4〜−0.3%)をやや上回った。
 また2012(平成24)年度の成長率は+1.2%のゲタを履いた。政府見通し(+2.2%)や日銀政策委員見通し(+1.8〜+2.2%)は年度中の回復が緩やかであっても、比較的無理なく達成できるかもしれない。
もっとも、12年度の前途には、海外情勢(米国の回復の弱さ、ユーロ圏の信用不安とマイナス成長、新興国の減速)、政策効果の息切れ(復興やエコカー補助金の予算切れ)、電力不足の帰趨などの不確定な下振れ要因も多く、予断は許されない。

【GDPデフレーターの横這いはデフレ解消の兆しではない】
 1〜3月期のGDP統計で、もう一つ注目されるのは、GDPデフレーターが13四半期振りに下落から+0.0%の横這いに変わり、名目成長率が実質成長率と同じ前期比+1.0%となったことである。
 これは、国内需要デフレーターが、家計消費デフレーター(前期比+0.1%)と政府消費デフレーター(同+0.4%)の上昇により、前期比+0.2%と14四半期振りに上昇したためで、マイナス項目の輸入デフレーターの上昇(同+1.2%)がこれを相殺して、GDPデフレーターは+0.0%の横這いとなったものである。
 これは、LNGや原油の輸入価格高騰が国内消費者物価に反映されている姿を映しており、残念ながら国内の需給改善によるデフレ解消の兆しではない。