2012年5月版
1〜3月期は外需のマイナス寄与が消え、家計消費中心に年率2%超の成長となろう

【鉱工業生産の回復テンポやや減速】
 外需の落ち込みによる10〜12月期マイナス成長(図表3)の反動もあって、1〜3月期は2%を超えるプラス成長に戻ったと見られる。
 3月の鉱工業生産は前月比+1.0%と製造工業生産予測調査の+2.6%をかなり下回る伸びとなった。4月と5月の同予測調査は、+1.0%と小幅上昇のあと、−4.1%と大きく落ち込む形となっている(図表1)。このため、1〜3月期に前期比+1.2%と3四半期連続して上昇した鉱工業生産は、4〜6月期に4四半期振りに下落する可能性がでてきた。
 3月の鉱工業出荷は前月比−0.1%とほぼ横這い圏内の動きにとどまったが、1〜3月期の平均は前期比+0.6%と3四半期連続して増加している。とくに1〜3月期の国内向け出荷は同+1.0%の増加となった。他方輸出向け出荷は同+0.1%にとどまった。

【鉱工業出荷では消費財の伸びが著しい】
 業種別にみると、1〜3月期に国内向け出荷が伸びたのは消費財(乗用車、携帯電話、繊維など)の同+4.0%と生産財(電子部品・デバイス、非鉄、プラスティックなど)の同+1.6%で、投資財は同−4.0%の減少であった。
 また国産品の国内向け出荷と輸入を合計した国内向け総供給によって国内需要の動向を見ると、上述の国産品の同+1.0%に加え、輸入も同+0.6%の増加となり、1〜3月期は全体で同+1.0%の増加となった。ここでも消費財(同+2.7%)と生産財(同+1.4%)の伸びが目立っている。
 他方1〜3月期の鉱工業製品の「純輸出」は、前述のように輸出が同+0.1%増、輸入が同+0.6%増と輸入の伸びが輸出の伸びを上回った。しかし、10〜12月期は輸出が同−1.7%減、輸入が同+0.9%増であったから、これと比較すれば、「純輸出」のマイナス幅は縮小した(下表)。



【1〜3月期の家計消費は前期の増加率を上回る高い伸び】
 需要項目の動向をみると、まず家計消費は「家計調査」と「販売統計」が揃って顕著な増加を示した。「家計調査」の消費水準指数は、3月に前年比+3.5%と3か月振りの大幅プラスとなり、1〜3月期平均も前年比+0.1%と小幅ながらも6四半期振りのプラスに転じた(図表2)。
 これには、前年3月が東日本大震災によって大きく落ち込んだ反動もあるが、季節調整済みの実質消費支出(全世帯)によってみても、1〜3月期は前期比+0.9%の増加である。




 「販売統計」の小売業販売額では、3月が前年比+10.3%、1〜3月平均が同+5.2%の大幅増加となったが、ここでも前年3月の大震災による落ち込みの反動がある。3月の前年比を品目別にみると、自動車の+50.4%、織物、衣服、身の回り品の15.5%が目立つ。
 乗用車新車登録台数も、3月は前年比+76.3%、季調済み前月比+4.4%とエコカー補助金の復活もあって回復が著しい。1〜3月期全体では、前年比+50.3%、前期比+26.8%であった。

【雇用・賃金の回復は遅い】
 家計所得の動向をみると、「家計調査」の実質可処分所得(勤労者家計)は、3月に前年比+3.7%、1〜3月に同+2.7%と増加した(図表2)。これが高い消費の伸びを支えたと見られる。
 他方、雇用・賃金の動向をみると、3月の雇用は「毎勤」の常用雇用が前年比+0.6%と増加率は横這い、「労調」の雇用者は前年比−0.3%、季調済み前月比−0.5%と減少した。この間労働力人口も減ったため、完全失業率は4.5%と前月比横這いであった(図表2)。
 消費が堅調な割には、雇用・賃金の回復は遅々としている。

【1〜3月期の設備投資は勢いを欠く】
 次に1〜3月期の設備投資を見ると、10〜12月期に前期比+4.8%と大きく伸びた設備投資は年明け後勢いがなく、反面10〜12月期に減少した住宅投資と公共投資には立ち直りの動きが見られる。
 足許の機械に対する設備投資動向を示す資本財総供給(国内向け出荷と輸入の合計、輸送機械を除く)を見ると、3月は前月比−3.3%と3か月連続して低下し、1〜3月期平均は前期比−3.7%と4四半期振りの減少に転じた(図表2)。10〜12月期大幅増加(同+2.9%)の反動もあるが、勢いを欠いている。
 先行指標の機械受注(民需、船舶・電力を除く)は、昨年1〜3月期から7〜9月期まで3四半期連続して増加したあと、10〜12月期は前期比−2.6%の減少となったが、本年に入り、1月は前月比+3.4%、2月は同+4.8%と立ち直り、1〜2月平均の10〜12月平均比は+5.3%と増加している(図表2)。このような先行指標の動きから判断すると、1〜3月期の設備投資の弱さは一時的と見られる。

【1〜3月期の住宅投資と公共投資は増加】
 住宅投資は、昨年中四半期毎に増減を繰り返し、10〜12月期は前期比−0.7%の減少となったが、新設住宅着工戸数は、10〜12月期に前期比−9.3%の減少となったあと、1〜3月期は同+8.3%の増加となった(図表2)。このことから判断すると、1〜3月期の住宅投資は再び増加するのではないかと見られる。
 公共投資は、東日本大震災後の昨年4〜6月期に前期比+6.6%の増加となったあと、2四半期連続して減少した(図表3)。しかし補正予算の執行本格化もあって、公共建設工事受注額の前年比が1〜3月期は+28.7%増と期を追って高まっていることから見て(図表2)、1〜3月期からは増加に転じたのではないかと見られる。

【1〜3月期の季調済み貿易・サービス収支、経常収支は前期比僅かに好転】
 最後に外需の動向をみると、前掲の表のように、1〜3月期の鉱工業製品の純輸出のマイナス幅は、10〜12月期に比して縮小した。
 通関ベースの季節調整済み貿易収支も、1〜3月期の月平均は4790億円の赤字と10〜12月期の平均(4980億円の赤字)よりも赤字幅が僅かに縮小した。
 季節調整済みの国際収支ベースでも、1〜3月期の貿易・サービス収支の赤字が1兆5218億円と10〜12月期(1兆7600億円の赤字)よりも僅かに縮小した。また1〜3月期の経常収支は、1兆7805億円の黒字と10〜12月期(1兆6818億円の黒字)よりも黒字幅が987億円(5.9%)拡大した。
 通関ベースと国際収支ベースは金額ベースであるが、1〜3月期の輸入原油・LNGの価格上昇を考えると、数量ベースの収支好転幅はもう少し大きかったと見られる。
 このため、10〜12月期に前期比−0.6%のマイナス成長寄与であった実質GDPの「純輸出」は、1〜3月期にはプラスの成長寄与度に転じたと見られる。

【1〜3月期は2.5〜3.5%のプラス成長か】
 以上を総括すると、10〜12月期に前期比−0.6%の成長寄与度となって、成長率を同−0.2%(年率−0.7%)引き下げた「純輸出」が(図表3)、1〜3月期にプラスの成長寄与度に転じる上、3四半期連続してプラスの成長寄与度となっている国内需要が1〜3月期も引き続きプラスの成長寄与度を続けると見られる。このため、1〜3月期の成長率は、年率2.5〜3.5%の領域に達すると予測される。
 もっとも、国内需要の中身では、10〜12月期に前期比+0.6%と大きく伸びた設備投資が頭打ちとなり、反面10〜12月期にマイナスであった在庫投資、住宅投資、公共投資がプラスに転じると見られる。また家計消費も、10〜12月期の前期比+0.2%よりは、高い伸び率が期待される(図表3)。