10〜12月期マイナス成長(−0.6%)の半分は一時的な在庫投資の落ち込みによる(H24.2.13)


【外需の落ち込みに加え内需の成長寄与度がほとんどゼロ】
 本日(2/13)公表された昨年10〜12月期の実質GDP(季節調整済み)は、前期比−0.6%(年率−2.3%)のマイナスであった。
 10〜12月期がタイ大洪水の影響で外需が大きく落ち込み、マイナス成長となったことは予測されていたが(このHPの<月例景気見通し>2012年2月版「10〜12月期は外需の悪化からマイナス成長、回復は1〜3月期以降に持ち越し」参照)、その減少幅は大方の見通しよりやや大きかった。
 それは、外需のマイナス寄与度を多少とも帳消しにすると見られていた内需のプラス寄与度がほとんどゼロに近かったからである。



【民間最終需要の成長寄与度は+0.4%】
 外需の内訳は、輸出が−3.1%(寄与度−0.5%)、輸入が+1.0%(同−0.2%)と、ほぼ予想された通りであった。
 内需の内訳では、民間最終需要の寄与度が+0.4%とかなり大きなプラスであった。これは、家計消費が前期比+0.3%(寄与度+0.2%)、設備投資が同+1.9%(同+0.2)と比較的確りしていたためである。

【民間在庫投資の成長寄与度はマイナス0.3%】
 しかし、民間の在庫投資が寄与度−0.3%に達する大幅な減少となったため、民間需要全体は前期比+0.2%(寄与度+0.1%)にとどまった。
 在庫投資の大幅減少は、タイの大洪水の影響で電気機械を始めとする各種の機械や乗用車などの部品輸入が途絶したため、これら業種の原材料と製品の在庫が大幅に押し下げられたためと見られる。
 加えて公的需要も、補正予算の執行が本格化せず、前期比−0.2%(寄与度−0.1%)の減少となったことも、内需の伸びを低くした。


【政府見通しの2011年度−0.1%は高過ぎる可能性】
 10〜12月期成長のマイナス幅が予想よりも大きかったため、2011暦年の成長率は−0.9%となった。また2011年度の成長率が政府見通しの−0.1%となるためには、本年1〜3月期の成長率が前期比+2.1%(年率8.7%)と昨年7〜9月期(同+1.7%、同+7.0%)を上回る高い成長率とならなければならない。
 また、日本銀行の政策委員の見通し(中央値)−0.4%となるためには、本年1〜3月期が前期比+0.9%(年率+3.6)とやや高めの成長率となる必要がある。
 恐らく実績値は、日銀見通しに近く、これを上回るとしても、政府見通しには達しないのではないかと思われる。

【本年1〜3月期の予想】
 1〜3月期については、在庫投資の反動回復、補正予算の執行に伴う公的需要の立ち直り、タイ大洪水の影響がなくなることに伴う外需の回復などのプラス要因がある。
 しかし、家計消費、設備投資、住宅投資の動向については、未だ1月以降のデータがなく、従来のトレンドから考えるとプラス、マイナスのいずれにしても、緩やかな動きではないかと見られる。
 従って、全体としては比較的高い成長率が予想されるが、その程度を判断するには、材料不足である。