峰崎財務副大臣「消費税逆進性緩和は税の還付で」、鈴木氏「強い経済から始めよ」(『世界日報』2010年7月17日号、小見出し加筆) (H22.7.17)
―平成22年7月16日の昼食勉強会の模様

【菅首相の唐突な消費税増税発言はG20の影響】
 「税制抜本改革と経済成長戦略」をテーマに峰崎直樹財務副大臣をゲストに迎えて、今年3回目の鈴木政経フォーラム(代表・鈴木淑夫元日銀理事)主催のディベート形式の勉強会が16日午後、東京・神田の学士会館で行われた。
 先の第22回参院選で民主党は大敗を喫したが、峰崎氏は菅直人首相が消費税増税による経済活性化という「第三の道」を掲げた理由について、「国際金融マーケットのわが国の財政状況悪化を見る目は非常に厳しい」(同氏)ことを挙げ、早期に財政再建に取り組む必要性を改めて指摘。そのうえで、消費税率の引き上げをテコに強い経済、強い財政、強い社会保障の確立に全力を注ぐ決意を述べた。

【消費税の逆進性対策は還付税方式がベター】
 ただ、参院選での国民の審判が厳しく、低中所得者層や年金生活者などに強い不満が出ていることを踏まえ、逆進性の強い消費税の増税については、@インボイス(仕送り状)制度の創設による軽減税率・複数税率の導入A低中所得者層や年金生活者への税金の還付―など、十分な配慮が必要と述べた。ただ、峰崎氏自身はインボイス制度の創設による複数税率制度の導入については、適用する財やサービスの分類をめぐって生産、流通、消費者相互の利害関係の調整が困難になるとして、還付方式が好ましいと強調した。また、累進税率の簡素化などで所得税の所得再配分機能が損なわれていることについても、見直しが必要と述べた。


【消費税増税を国債発行の縮小に使うな、まず「強い経済」から】
 これに対して鈴木氏は、所得税は税の捕捉率に大きな不公平があるため、納税者番号制度を導入してより公平・公正な所得税に改革することが望ましいが、消費税にはそうした難点がなく、税体系全般の透明性、公正性の確保のため消費税制度の整備・拡充は好ましいと指摘。ただ、1997年度の消費税率引き上げが景気に大きなデフレインパクトを与えたことを踏まえ、諸制度改革の順序としてはまず、強い経済の確立を優先すべきであり、これに伴って強い財政、強い社会保障制度を確立できると強調した。
 また、消費税増税による税収増を借金の返済に使ってはならないと警告し、そのために社会保障拡充のための目的税として位置づけ、一般会計に制度上の工夫を講じるべきだと主張した。峰崎氏は鈴木氏の指摘に十分配慮する意向を示した。

【法人税は税率引き下げと同時に損金算入期間の延長を】
 また、法人税をめぐって鈴木氏は実効税率の引き下げだけでは、多額の投資を要し、リスクの大きいエネルギーやバイオ、情報技術、大型農業など21世紀の基幹産業を十分に発展させることは困難だと指摘。そのうえで、7年間に限定されている設備投資額の損金算入期間を米国(20年)、欧州(無期限)を参考に延長することで、景気変動リスクにとらわれずに21世紀型の企業を育成し、高度情報通信網や電気自動車の充電施設網などの社会インフラも拡充できるよう、長期的視野にたった投資の促進を図る必要があると強調した。峰崎氏も、「傾聴に値する」と評価し、政府の経済成長戦略に取り込む意向を示した。

【成長率は今暦年が3%台、今年度が2%台後半】
 鈴木氏はこのほか、中国を始めとした新興諸国への輸出増、雇用者報酬の改善などから実質成長率は今歴年が3%台、今年度が2%台後半になると予測した。ただ、EUのソブリン・リスクや金融不安、米国の景気テンポの鈍化、世界的な株式市場の軟調などの懸念材料も指摘した。なお、「菅執行部は国民生活が第一という国民への契約を破り、新古典派の市場原理主義に政策転換したとの批判が続出している」との記者の問いに峰崎氏は、菅内閣は「市場原理主義に政策転換したわけではない。また(安倍政権時代の)上げ潮路線は採らない」として、みんなの党との連携には否定的な考えを示した。