2026年9月版
下期の日本経済は実質賃金増加と新規産業の設備投資で内需停滞を脱する可能性

【実質賃金の上昇持続と新規産業の設備投資】
 4〜6月期の実質GDP第2次速報値が明らかとなり、日本経済は国内需要が全体として停滞したままで、外需の僅かな拡大によってGDPが年率0.4%成長するという、事実上ゼロ成長の姿が露わになった。しかし下期を展望すると、国内民需が立ち直る兆しが見えている。
 一つは、ボーナスを中心とする名目賃金の前年比が本年に入って3〜4%台に拡大し、徐々に前年比1%台に下がってきた消費者物価とすれ違って、実質賃金が一貫してプラスで推移し、夏期賞与の出る年央には+2%台に達していることだ。消費マインドは引き続き慎重ではあるが、この実質賃金の増加を背景に、消費に徐々に底固さが加わっている。いま1つは、機械受注の中に、データセンター建設、AIや半導体関係の設備投資など新しい発展産業の関係が増えてきたことだ。
 これらの国内民需が、年度下期の成長を支える要因となることが期待される。7〜9月期「法人企業景気予測調査」によると、大企業と中堅企業の景況は、4〜6月期に下降したあと、7〜9月期から明年1〜3月期まで上昇を続ける見通しとなっている。上昇に大きく寄与する業種は、製造業では生産用機械器具、情報通信機械器具、非製造業ではサービス業、金融・保険業となっている。

【生産・出荷共に全体として一進一退ながら、半導体製造装置、石油製品などを中心に緩やかな増勢】
 6月の鉱工業生産は、前月比+0.1%と6か月連続の増加となったものの、低い伸びにとどまった。一方出荷は前月比+2.2%増と前月小幅減少(同−0.2%)のあと、再び伸びが戻った(図表1)。前月の伸び率停滞と当月の回復は、輸出で生じたもので、国内向け出荷は順調である。生産、出荷共に半導体製造装置の伸びが目立ったほか、生産では電子部品・デバイス、出荷ではガソリン・ナフサなど石油製品の伸びでも目立った。
 製造工業生産予測調査によると、8月は半導体製造装置など生産用機械、電気情報通信機械などを中心に前月比+6.4%と引き続き大幅な上昇のあと、9月は同−4.2%と一服する予測となっている(図表2)。
 生産、出荷とも総じて見れば一進一退を続けながら、半導体製造装置、石油製品などを中心に、緩やかな増勢を保っている。

【実質賃金の前年比上昇持続から停滞気味の個人消費はやや立ち直るか】
 国内需要の動向を見ると、7月の「家計調査報告」の実質消費支出(季調済み、以下同様)と日銀推計の「実質消費活動指数」(図表2)は、いずれも前月にやや大きく低下したあと、小幅に回復した。7月の「消費動向調査」の消費者態度指数は、前月比上昇し、3か月連続の増加となったが、3月と4月に大きく低下した反動もあり、7月の水準は、1、2月の水準に戻っていない。4〜6月期の実質GDP統計(2次速報)では、個人消費が前期比−0%から0%に上方修正されたが、消費の大勢は横這いと言える。
 しかし、背景にある実質賃金は、前年比で6月+2.2%、7月+2.4%(図表2)と本年夏期ボーナスの伸びを反映して高まっている。これを反映して、秋以降の消費動向は、横這い圏内を脱してやや立ち直りを見せるかもしれない。

【設備投資先行指標の機械受注に動意】
 民間企業の設備投資は、4〜6月期の実質GDP統計の2次推計値では前期比−0.9%であったが、機械投資の動向を反映する資本財国内総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、4〜6月期に前期比+4.1%のあと、7月は前月比+5.0%であった。また先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、4〜6月期の前期比は+0.2%と横這い圏内であったものの、6月の前月比は+9.7%増となったあと、7〜9月期の見通しは前期比+4.9%増とデータセンター投資などを中心にやや動意が見られる。
 本年度の整備投資計画(例えば6月調査「日銀短観」の前年比+8.9%)に比して動意の少なかった月々の設備投資関連統計にも、やや動きが出てきたのかもしれない。

【貿易サービス収支の大幅赤字続く】
最後に外需の動向を見ると、国民所得統計の「純輸出」に対応する7月の国際収支統計の「貿易サービス収支」(図表2)は、5839億円の赤字と前月(8969億円の赤字)に比し赤字は縮小したものの、巨額の貿易赤字(7月は4294億円)を反映し、引き続き大幅な赤字である。通関統計を見ると、輸入の大半を占めるのは、原粗油、半導体等電子部品である。他方輸出は、自動車、半導体等電子部品、半導体等製造装置を中心に、輸入を上回る伸びを続けている。
 4〜6月期の外需の成長寄与度は、+0.5%であったが、これが成長率のプラスをかろうじて維持した(4〜6月期成長率+0.4%、年率換算は+1.4%)。果たして7〜9月期は、内需に立ち直りが見られるであろうか。