2026年7月版
中東動乱が長引く中、日本経済は引き続き国内の企業投資、家計消費を中心に緩やかな回復
【日本経済に見られる国際原油市況高騰の影響は軽微】
鉱工業生産、出荷は4月、5月と回復し、中東動乱の実体経済面への影響は一巡したように見えるが、動乱に伴う国際原油市況の高騰は続き、3月から上昇率を高め始めた日本の円建輸入物価指数は、4月(前年比+21.3%)、5月(同+26.1%)、6月(同+29.7%)と急上昇し、これにつれて国内企業物価指数も4月(同+5.4%)、5月(同+6.6%)、6月(同+7.1%)と上昇率は加速している。
これが今後の消費者物価の動向にどのように響いてくるかが注目されるが、現在までのところ、5月迄の実質賃金が5か月間前年を上回ったこともあって、消費者の態度に格別動揺は見られない。
一方企業活動も、6月調査「日銀短観」に窺われる本年度の設備投資計画は、ソフトウェア・研究開発を中心に、前年実績並みの8%増とかなり確りしている。
【生産、出荷は2月、3月減少のあと、4月、5月と回復】
5月の鉱工業生産と出荷は、前月比+0.5%、同+0.6%と、4月に続き2か月連続して増加した。イラン紛争に伴うホルムズ海峡封鎖により、原粗油の輸入が減少し、2月、3月に石油製品工業(ガソリン、重油等)と石油化学工業(ポリエチレン、合成ゴム等)を中心に生産、出荷は減少したが、4月、5月には輸入減少による生産、出荷の落ち込みは解消した。
製造工業生産予測調査によると、6月は前月比+3.7%とやや大きく上昇するが、石油関係の反動増加は既に一巡しており、これは主として生産用機械、汎用・業務用機械、電気・情報通信機械など、本来の日本製造業の大本を成す機械工業の増産によるものである。
5月の出荷増加は、国内向けが前月比+0.5%増加したためで、輸出は同−0.8%の微減であった。この国産品の国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が前月比+3.7%の増加となったため、同+1.4%と2か月連続して増加した。
【実質賃金は5か月連続して前年比増加】
国内需要の動向を見ると、イラン紛争の影響もあって3月、4月と弱含んでいた「消費者態度指数」は、5月、6月と2か月連続して上向いた。これを反映して5月の「家計調査」の消費支出(季調済み実質)は、4月の前月比+1.6%に続き、同+3.7%とやや大きく回復した。「実質消費活動指数」(旅行収支調整済み、日銀推計)も、3月に減少したあと、4月、5月と回復した(図表2)。
現金給与総額の前年比も、昨年秋頃から本年1月迄は+2%台で推移していたが、本年のベア率を反映して、2月以降5月迄は+3%台となった。他方消費者物価の前年比(図表2)は2%台に下がってきているため、実質賃金の前年比は、1月以降5月迄、連続してプラスとなっている(図表2)。
5月頃からの消費者態度改善には、このような実質所得面の改善も寄与していると見られる。
【設備投資の緩やかな上昇続く】
設備投資の動向を見ると、機械投資を反映する資本財(除、輸送機械)の国内総供給(国産の国内向け出荷と輸入の合計、図表2)は、4月に前月比+7.5%と大きく伸びた後、5月は同−1.1%と小幅に減少したが(図表2)、4〜5月平均の1〜3月平均比は+4.6%の増加と増勢は続いている。
先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は月毎に増減を繰り返しているが、ならして見ると、本年1〜3月期は前期比+0.3%、4月は1〜3月平均比+6.0%と増勢を保っている(図表2)。
6月調査「日銀短観」の本年度設備投資計画(ソフトウェア・研究開発を含み、土地投資を除く)は、全産業(金融機関を含む)で前年比+8.9%(前年度実績は同+8.6%)と前年に続き高い伸びとなっている。このうちソフトウェア投資だけで見ると、前年比+13.5%と、前年実績(同+7.5%)を大きく上回る伸びとなっている。
合理化、省力化、新製品開発などを中心に、企業の設備投資意欲は衰えていないように見える。
【貿易サービス収支の黒字基調続く】
最後に海外との取引動向を見るため、GDP統計の「純輸出」に対応する国際収支統計の「貿易サービス収支」(季調済み)を見ると(図表2)、5月は貿易収支の黒字が前月比半減し、加えて旅行収支の黒字縮小からサービス収支が前月の黒字から赤字に変わったため、438億円の小幅赤字となった。もっとも4月が7413億円の大幅黒字であったため、4〜5月は7000億円ほどの黒字となっており、4〜6月期のGDP統計の「純輸出」は、6月の動向にもよるが、大きく好転する可能性がある。