2026年6月版
中東動乱の実体経済面への影響は一巡したが、物価面への影響は続く

【中東動乱に伴う日本経済の動揺は一巡、4、5月から再び緩やかな回復軌道】
 2月から始まった米国のイラン軍事侵攻とイランのホルムズ海峡封鎖に伴い、2月、3月の鉱工業生産と出荷は、ガソリン、ナフサなど石油製品・石油化学製品を中心に下落した。1〜3月期期の実質GDP(2次速報値)は、設備投資の減少を中心に前期比年率1.8%の増加にとどまった。
 しかし、鉱工業生産は4月から増勢を回復し(図表1)、これを映じて景気動向指数も3月に下げ止まり、4月から回復している。個人の心理的影響の強い景気ウォッチャー調査の現状判断DIは4月まで下落し、5月に回復した。先行判断DIは、4月5月と回復している。中東情勢の悪化に伴う日本経済回復の足踏みは、一段落したように見える。
 消費者物価への影響は、ガソリン価格補助による物価押し下げ効果もあって4月まで出ていないが(図表2)、4月の円建輸入物価は前年比+17.5%と大きく上昇しており、今後の国内物価へのコスト面、インフレ心理面の波及効果が懸念される。

【2〜3月と続落した生産・出荷は、4月から回復軌道へ】
 2月、3月と続落した鉱工業生産と出荷は、4月に入り、生産は前月比+0.8%、出荷は同+1.5%と反発した(図表1)。石油製品(ガソリン等)と石油化学製品(ナフサ、ポリエチレン等)の減産は続いているが、汎用・業務用機械、電気・情報通信機械、電子部品・デバイス等日本の主力工業が増勢を続け、全体の増加を支えている。
 製造工業生産予測調査によると、5月に電子部品・デバイス、生産用機械などを中心に前月比+5.1%と大きく増加したあと、6月は同−0.4%と一休みする予想である(図表1)。
 4月の出荷増加は、国内向け(前月比+1.6%)と輸出(同+1.4%)の双方の増加によるもので、この国内向け出荷に輸入を加えた国内総供給は、輸入が同−1.5%と微減したものの、同+1.2%の増加となった。
 生産・出荷活動は、緩やかながら着実に拡大している。

【中東情勢で一時動揺した消費態度は実質賃金の上昇持続に支えられ、4、5月頃から回復】
 国内民間需要の動向を見ると、4月の家計調査の実質消費支出(季調済み)と実質消費活動指数(同)=日銀推計は、共に前月比増加した(図表2)。また5月「消費動向調査」の消費者態度指数は、中東動乱に伴う物価上昇・物不足などの懸念もあって、3月、4月と低下していたが、5月は上昇に転じた。
 現金給与総額の前年比は、2〜4月に3%台を持続しており、消費者物価(帰属家賃を除く)の前年比が1%台にとどまっている下で、1〜4月の実質賃金は前年比+0.7〜2.0%のプラスを維持している(図表2)。他方4月の完全失業率は2.5%(前月比−0.2%)に低下した(図表2)。政府の補助金による物価抑制効果もあるとは言え、このような物価・雇用情勢が、消費態度を下支えていることは見逃せない。

【設備投資は1〜3月期に一時減少】
 「法人企業統計調査」の1〜3月期設備投資が季調済み前期比−2.0%、前年同期比0.0%となったのを反映し、1〜3月期実質GDP統計(2次速報)の設備投資は、前期比+0.3%から−0.7%に下方修正された。その結果2025年度の設備投資は、+2.0%となった。
 機械への投資動向を反映する4月の資本財(除、船舶・電力)総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、前月比+8.0%と大きく伸びた。他方、先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、1〜3月期に前期比+0.3%であった。
 3月調査「日銀短観」の26年度設備投資計画(ソフトウェア投資を除く、金融機関を含む全産業)は前年比+2.9%である。本年度も設備投資は、金融緩和の下で緩やかな増勢を辿ると見られる。

【原粗油の輸入減少から貿易収支は大幅な黒字】
 最後に外需の動向を見ると、1〜3月期の実質GDP(2次速報)の「純輸出」は、成長率に対する寄与度が+0.3%のまま変わらなかった。「純輸出」に対応する4月に国際収支統計の「貿易・サービス収支」(季調済み)は、7413億円の大幅黒字となった。これは、数年間赤字を続けているサービス収支が、4月に大幅な黒字に転じたことによる一時的な動きと思われる。
 4月の関税統計を見ると、中東情勢を反映して原粗油の輸入が前年比−49-.9%と落ち込んでいる。これに伴い、国際収支統計の貿易収支は、3月、4月と大幅な黒字を記録しており、これも「貿易・サービス収支」の黒字拡大に寄与している。