2026年5月版
中東動乱の影響は出ているが経済全体は緩やかな回復を持続
【石油関連製品は生産・出荷が低下、価格は上昇】
2月末から始まった米国・イスラエルのイラン軍事侵攻と、イランのホルムズ海峡封鎖に伴う世界的な石油入手難と石油価格高騰の影響が、日本に出始めた。日本の円建輸入価格の前年比は、原油、ナフサなどを中心に3月+8.0%、4月+17.5%と大きく上昇し、3月の鉱工業生産、出荷は、ナフサ、ガソリン、ポリエチレン等を中心に若干低下した。しかしその影響は小さく、4月以降の製造工業生産は持ち直すと予測されている。
4月の「景気ウォッチャー調査」の「現状判断DI」や3月の「消費動向調査」の「消費者態度指数」など、心理的影響の大きい指標では、現状判断が弱気になっている。しかし経済統計に基づく3月の「景気動向調査」の「景気動向一致指数」は、2月に低下したあと3月は持ち直している。
日本の景気は、中東動乱の影響を受けつつも、引き続き緩やかな回復を続けいている。
【石油製品の生産、出荷が減少】
3月の鉱工業生産と出荷は、前月比夫々−0.5%、同−1.1%といずれも低下した(図表1)。生産、出荷の減少は、イラン軍事紛争に伴う石油関連製品の減少が主因である。
エチレン、ポリプロピレン等無機・有機化学工業の生産は前月比−8.6%、出荷は同−4.6%、ナフサ・ガソリン等石油・石炭製品の生産は同−7.7%、出荷は同−5.4%と、いずれも前月比やや大きく低下した。このため、出荷の減少はもっぱら国内向け出荷の減少(前月比−8.7%)によるもので、輸出は+3.7%の増加であった。
製造工業生産予測調査によると、4月は前月比+2.1%の上昇、5月は同+2.2%の上昇と、2か月連続減少のあと、2か月連続して上昇する予測となっている(図表1)。上昇を主導する業種は生産用機械、電子部品・デバイス、電気・情報通信機械、輸送機械など日本の主要産業であるが、エチレン、ナフサ、ガソリン等の石油製品や関連有機化学製品の減少傾向が4月以降にどう響いてくるかが注目される。
【物価再上昇の気配から消費態度は不冴え】
国内需要の動向を見ると、3月の「家計調査」の消費支出(実質、季調済み)と実質消費活動指数(同、図表2)は、いずれも前月比減少した。「消費動向調査」の「消費者態度指数」も、1〜2月上昇のあと、3月はやや大きく低下した。
イラン軍事紛争のニュースが連日伝えられ、3か月続けて下落していた消費者物価(除く生鮮食品)の前年比が、3月にやや上昇に転じたことも、消費者心理に響いたと思われる。
3月の実質賃金は、実質化に用いる消費者物価(持ち家の帰属家賃を除く総合)の前年比上昇率が1%台に落ち着いている下で、3か月続けて上昇している。しかし4月以降、石油関連製品値上がりの影響が小売段階にどう響いてくるか、注目される。
【先行指標の機械受注は着実に増加】
設備投資の動向を見ると、国内の機械投資の動向を反映する資本財(除、輸送機械)の国内総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、3月に前月比−4.0%の減少となった。このため1〜3月期の前期比も−2.4%の減少となったが、これには10〜12月期に同+5.1%と大きく増加した反動もある(以上図表2)。
先行指標の機械受注(民需、除く船舶・電力)は、10〜12月期に前期比+6.6%と大幅な増加になったあと、本年1〜2月の月平均は、10〜12月の月平均比を更に+9.8%上回っている。設備投資は前年を上回る年度計画に沿って着実に伸びていると見られる。
【1〜3月期の「純輸出」は好転の見込み】
最後に外需の動向を見ると、GDP統計の「純輸出」に対応する国際収支統計の「貿易・サービス収支」(季調済み)は、3月に1958億円の赤字、1〜3月期では3041億円の赤字となった(図表2)。しかし1〜3月期の赤字総額は、前年10〜12月期の赤字総額(5624億円)の54.1%であり、改善傾向が顕著である。1〜3月期GDPの「純輸出」は、成長に対しプラスの寄与になると見られる。これは主として輸出の伸びによるもので、国際収支ベースの1〜3月期輸出は、前期比+8.8%の伸びとなっている(因みに輸入は同+6.8%)。
1〜3月期の実質GDPは、内外需共に緩やかな回復になったと見られる。