2025年12月版
景気は夏場にやや足踏みしたあと、秋以降は再び緩やかな回復軌道へ
【7〜9月期にマイナス成長となったものの、月毎の推移を見ると、9月以降は再び緩やかな回復軌道へ】
7〜9月期のGDP統計は、2次速報値で、前期比増加率が−0.4%(年率−1.8%)から同−0.6%(同−2.3%)へ下方修正された(図表3)。しかし月毎の推移を他のマクロ指標で見ると、例えば鉱工業生産指数(図表1)が減少したのも、景気動向一致指数が下降したのも、7月と8月である。生産指数はその後9月、10月と上昇し(同)、景気動向一致指数も9月10月と上昇に転じた。
以上のことから判断すると、日本経済の回復は米国の関税引き上げに伴う輸出の鈍化や、猛暑に伴う消費の停滞などから、夏場にやや足踏みしたものの、秋口からは再び緩やかな回復軌道に戻っているように見える。10〜12月期の「法人企業景気予測調査」によると、大企業の「国内の景況判断」は、7〜9月期に1.5%の上昇超に鈍化したものの、10〜12期から明年4〜6月期までの3四半期は、4.0〜6.9%の高い上昇超で推移する見通しとなっている。
【生産、出荷は9〜10月増加のあと11〜12月は減少の予想】
10月の鉱工業生産と出荷は、前月比夫々+1.4%、+1.3%と前月に引き続き増加した(図表)。出荷の増加を国内向けと輸出に分けると、輸出は前月比+2.2%、国内向けは同+1.0%と、いずれも増加した。また国内向け出荷に輸入を加えた国内総供給は、輸入が前月比−0.7%とやや減少したため、同−0.2%の微減となった。
製造工業生産予測調査によると、11月は前月比−1.2%減、12月は同−2.0%減と2か月連続して減少する予測となっている(図表1)。減少する業種は、輸送機械、電気・情報通信機械、生産用機械など、主力資本財である。これが輸出減退によるものか、国内設備投資の足踏みによるものか、注意深く見ていきたい。
【値上がりの大きい飲食料品の消費は減少、耐久財・サービスの消費は小確り】
国内の消費動向を見ると、10月の「家計調査」の実質消費支出(季調済み、以下同じ)は、前月(前月比−0.7%)に続き、同−3.5%とやや大きく減少した。飲食料品の相次ぐ値上げが響いたようだ。他方、10月の実質消費活動指数(日銀推計、図表2)は、小幅ながら3か月連続して増加した(図表2)。食品など非耐久財の消費は減少し、耐久財とサービスの消費は伸びている。11月実施の「消費動向調査」によると、「消費者態度指数」は8月から11月まで4か月連続して上昇しており、特に11月の上昇幅は大きい。消費者の態度は弱気化していないようだ。
人手不足の中、就業者数は小幅ながらジリジリと増加を続けている(図表2)。実質賃金は10月も前年比マイナスとなった(図表2)。近く予想される日銀の利上げに伴い、円安修正が起こるか、またそれが今後の消費者物価上昇率をどの程度鎮静させるか注目される。
【7〜9月期の設備投資は3四半期振りに前期比減少】
国内の設備投資動向を見ると、機械投資の動向を反映する資本財(除、輸送機械)の国内総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、7月に大きく減少したあと、8〜10月と3か月続けてジリジリ増加している(図表2)。7〜9月期の「法人企業統計調査」によると、5四半期続けて上昇していた設備投資(季調済み)が、7〜9月期に6四半期振りに前期比−1.4%の減少となった。これを反映して。7〜9月期(第2次速報)の実質GDP統計の設備投資も、前期比+1.0%から同−0.3¥2&に下方修正された(図表3)。これは3四半期振りの減少である。
設備投資回復の足踏みか、弱含みに転じたのか、今後の動向が注目される。先行指標の機械受注(民需、除く船舶・電力)は、9月に前月比+4.2%と増加した。しかし7〜8月と減少したため、7〜9月期は前期比−2.1%と4四半期振りの減少となった(図表2)。
【10月の貿易サービス収支の赤字は7〜9月期の月平均より縮小】
最後に外需の動向を見ると、実質GDP統計の「純輸出」は7〜9月期までの1年間、四半期毎にプラス、マイナスを繰り返し、本年の7〜9月期の実質GDPに対する寄与度は−0.2%であった(図表3)。GDP統計の「純輸出」に対応する国際収支統計の「貿易・サービス収支」は、10月に−1571億円の赤字(図表2)であったが、赤字幅は7〜9月期(月平均−2775億円)より縮小した。10〜12月期全体で「純輸出」がどうなるかは、まだ推測しにくいが、米国の関税引き上げに対する対応が進んで貿易収支の赤字が縮小すれば、多少の好転があるかもしれない。