2025年3月版
物価高騰から家計関連に弱さが見られるものの、全体としては緩やかな回復が続く
【10〜12月期の実質成長率は家計関連を中心に下方修正】
昨年10〜12月期の実質GDP2次速報値(季調済)が公表され、民間の消費と住宅投資が下方修正されたため、前期比年率の成長率は1次速報値の+2.8%から+2.2%へ下方修正された。
年明け後も、1月の全国消費者物価の前年比が+4.0%と一段と高まり、1月の実質賃金は3か月振りに再び前年比マイナス(−1.8%)となった。2月の「景気ウォッチャー調査」の「景気の現状判断DI」は、1月、2月と2か月連続して低下した。2月の「消費動向調査」の「消費者態度指数」も、12月から2月にかけて、3か月続けて低下している。
もっとも、企業活動を中心に見る「景気動向調査」では、一致指数が12月に続き1月も上昇している。景気は家計関連に弱さが見られるものの、全体としては、緩やかな回復が続いている。但し、1〜3月期の実質GDPは、10〜12月期に増加した外需の反動減で、一時的にマイナス成長に陥る懸念がある。
【鉱工業生産は引き続き一高一低、国内向け総供給は横這い傾向】
1月の鉱工業生産は前月比−1.1%の減少と、3か月連続して低下した(通計−3.5%)。製造工業生産予測調査によると、2月はその反動もあって前月比+5.0%と大幅な上昇が見込まれているが、3月は再び同−2.0%の低下と予測されている。1月の生産減少、2月の生産反動増加の中心業種は、生産用機械(半導体製造装置等)、電子部品・デバイス(モス型IC<メモリ>、混成IC等)などで、成長品目に見られる振れと考えられる。
1月の鉱工業出荷は前月比−1.5%の減少と、10月から月毎に一高一低を繰り返している。これは輸出がこの半年ほど月毎に一高一低を繰り返しているためで、国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が増加傾向にあるため、横這い傾向となっている。1月は輸入増加から前月比+0.85と小幅に増加した。
国内向け総供給の中では、資本財(除輸送機械)の増加傾向が目立ち(図表2)、国内民間需要を支えている中心は、企業の設備投資と見られる。
【1月の消費は物価高騰から弱含み】
国内民間需要のうち、まず個人消費の動向を見ると、消費者物価の高騰(図表2)から1月の実質賃金は前年比−1.8%と3か月振りの下落となり、1月の「家計調査」の実収入も、4か月振りに前月比−1.1%の減少となった。このため1月の「家計調査」の実質消費支出は前月比−4.5%と4か月振りの下落、1月の「消費活動指数」(日銀推計)も、前月比−1.3%と12月(同−0.7%)に続き、2か月連続の下落となった(図表2)。
労働情勢を見ると、人手不足の下で労働力化率が上昇(非労働力人口の減少)しているため、就業者、雇用者共にジリジリと増加し、完全失業率は最近4か月間横這いを続けている(図表2)。このような情勢の下で、今年のベア率も比較的高めになると見られ、先行き個人消費の立ち直りが期待できるか注目される。
【資本財(除輸送機械)の国内総供給、民需(除輸送機械)の機械受注は共にジリ高】
設備投資の動向を見ると、実質GDP統計の設備投資は、昨年10〜12月期に前期比+0.6%の増加となったが、この1年半ほど、1四半期毎に増減を繰り返しつつ、年率1%強の緩やかな上昇傾向を辿っている。
先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)の増加は、10〜12月期に前期比+2.9%とやや加速した(図表2)。機械投資の同行を反映する資本財(除、輸送機械)の国内総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)の増加も、10〜12月期に前期比+9.3%と加速したあと、1月の前月比も+5.7%と高い伸びとなっている(図表2)。
日銀「短観」や「法人企業景気予測調査」の本年度設備投資計画が名目値で前年比10%程度の伸びとなっていることから見ると、期末にかけて投資のテンポがやや加速しているもかもしれない。
【10〜12月期のプラス成長に寄与した外需は1〜3月期に反動減となる見込み】
最後に外需の動向を見ると、10〜12月期の実質GDPの増加は、すべて外需増加の寄与によるものであった。これはGDP統計の純輸出に対応する国際収支統計の貿易・サービス収支の赤字が大きく縮小し、12月には、季調済み貿易・サービス収支としてはほぼ3年振りに黒字に転じたためである(図表2)。
しかしこの反動が出て、1月の貿易・サービス収支は大幅な赤字に戻った(図表2)。これは12月の貿易収支が輸出急増・輸入急減から黒字になり、その反動が本年1月には輸出入に出て、大幅な赤字に戻ったためと見られる。例年2月中頃に行われる中国の春節が、今年は1月末から2月初に行われたことの影響があるようであるが、詳細は不明である。
10〜12月期には「純輸出」が成長に寄与したが、1〜3月にはその反動が出そうである。