2025年2月版
物価高騰下個人消費は不冴ながら、設備投資と輸出に支えられて緩やかな回復が続く

【12月は輸出と設備投資の回復が目立つ】
 消費者物価の上昇率が再び高まる下で(図表2)、消費動向は引き続き冴えないが、12月は設備投資と輸出の伸びに支えられて、前月低下した鉱工業生産と出荷が再び増加し、貿易収支(季調済)は輸出の大幅増加から14か月振りの黒字となった。
 12月の「景気動向一致指数」は、前月低下のあと、再び増加し、1月の「景気ウォッチャー調査」の「景気の現状判断DI」は、11月、12月と上昇したあと、1月は企業動向関連が引き続き上昇したものの、家計動向関連の低下が響き、3か月振りに低下した。
 間もまく公表される10〜12月期の経済成長率は、物価高騰下、個人消費は横這い圏内の動きと思われるが、全体は設備投資と輸出に支えられてプラス成長を続けると思われる。

【12月の生産と出荷は輸出に支えられて増加】
 12月の鉱工業生産と出荷は、前月比夫々+0.3%、+0.5%と、前月減少のあと再び上昇した。製造工業生産予測調査によると、1月は同+1.0%、2月は同+1.2%と、小幅ながら続伸する見込みとなっている(図表1)。
 12月の出荷増加は、輸出が前月比+7.3%と大きく伸びたためで、国内向け出荷は同−1.2%の減少であった。この国内向け出荷に輸入を加えた国内総供給も、輸入が同+0.1%とほぼ横這いであったため、同−0.6%の小幅減少となった。
 鉱工業生産と出荷は、引き続き一進一退を繰り返している(図表1)。

【根強い物価上昇で消費者の先行き不安は続く】
 国内需要の動向を見ると、消費者物価の基調を示すコアコア指数(除、生鮮食品、エネルギー、図表2)の前年比が再び高まる下で、消費者の先行き不安は続いており、「消費動向調査」の消費者態度指数は、12月、1月と2か月連続して低下した。「消費活動指数」(日銀推計)も弱含みである(図表2)。
 他方、人手不足の下で新規求人倍率はジリジリと上昇しており、12月の完全失業率は前月比−0.1%ポイントの2.4%と僅かに低下した(図表2)。ボーナス期の6、7月に前年比プラスとなった実質賃金は、根強い消費者物価上昇の下で、8、9、10月と再び前年比マイナスに沈んでいたが、冬期ボーナス期を迎え、11月と12月は再びプラスに戻った(図表2)。「家計調査」の実収入も10〜12月と3か月連続して前年を上回り、12月の季調済実質消費支出は前月比で増加した。

【設備投資の回復にやや勢い】
 設備投資の動向を見ると、機械投資の動向を反映する資本財(除、輸送機械)の国内総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、9月以降増加傾向を続けているが(図表2)、12月も前月比+1.5%となり、10〜12月期の前期比増加率は+9.7%と大きく伸びた。先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力、図表2)も、10月(前月比+2.1%)11月(同+3.4%)と増勢を続け、10〜12月期の見込み(前期比+5.7%)を上回る勢いを示している。
 12月の日銀「短観」や、内閣府・財務省「法人企業景気予測調査」における本年度設備投資計画(ソフトウェア投資を含み、土地投資を除く)の増加率は、前年比夫々+10.2%、+10.3%と高い伸びとなっているが、その実現可能性が出てきたように見える。

【12月の貿易収支は黒字に転換、10〜12月の「純輸出」も成長にプラス寄与か】
 最後に外需の動向を見ると、GDP統計の「純輸出」に対応する国際収支統計の「貿易サービス収支」(季調済)は、12月に1570億円の黒字と23年10月以来14か月振りの黒字を記録した。23年10月の黒字転換はサービス収支が一度限りの大幅黒字を記録したことによるものであったが、今回は貿易収支が輸出増加に伴って1570億円の黒字に転換したためである。12月の鉱工業出荷でも輸出が大きく伸びたことを述べたが、通関統計によると、輸出増加に大きく寄与した品目は、半導体等製造装置、半導体等電子部品、食料品である。
 来週月曜日に公表される予定の10〜12月期実質GDPは、物価上昇の持続で個人消費は冴えないものの、久し振りに設備投資と輸出に支えられたプラス成長になる公算が高い。