2024年2月版
物価高騰の持続で国内民間需要は冴えないが、輸出と政府消費支出に支えられて緩やかな回復は続く

【1月の「景気の現状判断DI」は3か月振りに低下】
 12月の鉱工業生産と出荷は、輸出の伸長を背景に、揃ってやや大きく増加した(図表1)。12月の景気動向一致指数も、2か月振りの上昇となり、同先行指標は4か月振りの上昇となった。
 他方、家計消費は、1月の消費者態度指数は引き続き上昇し、消費意欲の根強さを示しているものの、大幅な物価上昇(図表2)の下で実質賃金の低下が続いているため、実質消費の実績は下落している(図表2)。1月の「景気ウォッチャー調査」の「景気の現状判断DI」は、家計動向関連と企業動向関連の非製造業が低下したため、3か月振りに低下した。
 2月15日に公表される10〜12月期の実質GDPは、個人消費、設備投資、民間住宅投資などの国内民間需要は、物価高騰下で冴えないものの、純輸出と政府消費支出の増加に支えられて、若干のプラス成長となるのではないかと思われる(図表1)。

【鉱工業生産、出荷は一進一退が続く】
 12月の鉱工業生産と出荷は、前月比、夫々+1.8%、+2.5%とやや大きく上昇し(図表1)、10〜12月期の前期比も、夫々+1.4%、+0.8%と増加した。しかし23年全体を見ると、原材料不足に伴う工場の稼働率低下が年初や年央にあったことが響き、生産は前年比−1.1%、出荷は同−0.5%の夫々微減となった。12月の前年同月比(年間の増減)も、生産−0.7%、出荷+0.7%とほぼ横這いであった。
 製造工業生産予測調査によると、1月は12月増加の反動で生産用機械などを中心に、前月比−6.2%の低下、2月は同+2.2%の増加となっている(図表2)。
 12月の出荷を輸出と国内に分けると、輸出は前月比+7.5%、国内は同+1.0%と輸出の寄与が大きい。国内向け出荷に輸入を加えた国内総供給は、輸入が同+0.7%の増加にとどまったため、全体は同+0.8%の増加であった。

【実質消費支出の低下続く】
 12月の実質消費支出(家計調査)と実質消費活動指数(日銀推計、図表2)は、いずれも前月比減少した。これで実質消費指標の低下はほぼ3か月続いている(図表2)。
 「消費動向調査」の消費者態度指数は、1月まで4か月連続して上昇しているので、消費態度が衰えているのではなく、物価上昇に所得がついていけないためと思われる。
 因みに昨年12月の現金給与総額は、前年比+1.2%上昇し、就業者数は前年比+0.6%増加した。これに対し、昨年中の消費者物価上昇率(12月の前年比)は、+2.6%であった。1.2+0.6(名目賃金と雇用の増加)は、物価上昇2.6に届かない。
 この間、12月の完全失業率は2.4%と、僅かに低下した(図表2)。

【設備投資の年度計画に比し、月々の設備投資関連指標の動きは鈍い】
 機械投資を反映する12月の資本財出荷(除、輸送機械)は、前月比+10.3%と前月減少(同−4.4%)の反動もあって大きく増加した。この結果、10〜12月期は前期比+1.3%と前期の減少(前期の前々期比−4.2%)をやや取り戻した。
 先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、11月に前月比−4.9%の減少となった(図表2)。本年4〜6月期、7〜9月期と2期連続して減少してきた機械受注(同)は、10〜12月期も立ち直りの気配を見せていない。人手不足と資材高騰が設備投資に響いていると見られるが、それにしても2桁増加の年度計画(日銀「短観」)との乖離が大き過ぎる。

【貿易・サービス収支の赤字は縮小】
 GDP統計の「純輸出」に対応する国際収支統計の「貿易・サービス収支」は、12月も6864億円の赤字にとどまり(図表2)、この結果10〜12月期の赤字は1兆1881億円に縮小した(前期の赤字は1兆9953億円、図表2)。これは、インバウンドの増加に伴うサービス収支の大幅好転による面が大きい。
 間もなく公表される10〜12月期の実質GDPは、純輸出の好転に助けられて、若干のプラス成長となる公算が大きい(図表1)。