2023年10月版
マクロ需給バランスの改善を背景に、企業業績は回復を続けているが、物価高騰持続で消費者の姿勢は慎重

【企業業績の改善は続いているが、末端の消費には一服感】
 物価高騰の持続で、「消費者態度指数」など消費者の姿勢を示す指標には慎重さも見られるが、景気は全体として引き続き回復基調を保っている。9月調査「日銀短観」の「業況判断DI」は、製造業、非製造業ともに改善し、7〜9月調査「法人企業景気予測」の現状判断も、同様に改善傾向を示している。
 日本経済全体の「マクロ需給(日銀推計)も、4〜6月期にはほぼ需給がバランスするまでに回復しており、2020年第2四半期から続いていた「供給超過」基調が、今後はほぼ3年振りに「需要超過」基調に転じる見込みになってきた。
 しかし9月調査「景気ウォッチャー調査」の「判断DI」には、「現状」も「先行き」も景気回復の一服感が出ており、物価高騰持続に伴う「インフレのデフレ効果」には、引き続き注意が必要である。

【鉱工業生産、出荷は底堅いながらも目先は一進一退】
 8月の鉱工業生産と出荷は、前月比、夫々0.0%、+0.1%とほぼ横ばいにとどまったが(図表1)、これには主力自動車工場で月末に一時的なトラブルがあり、自動車工業全体の生産が前月比−3.9%の減少となったことが響いている。その反動もあって、製造工業生産予測調査では、9月は前月比+5.8%、10月は同+3.8%と再びかなりの上昇が見込まれている。
 8月の出荷を国内向けと輸出に分けると、国内向けは前月比+3.6%と確り増加し、輸入を含めた国内総供給も同+2.6%の増加となった。反面輸出は、前月比−5.9%と3か月振りに減少した。
 鉱工業生産、出荷の基調は、底堅いながらも、目先は一進一退を続けている(図表1)。

【物価高騰下で実質消費支出は引き続き不冴】
 国内需要の動向を見ると、全国消費者物価が前月比3%台の上昇(基調を示す生鮮食品・エネルギーを除く所謂コアコアCPI(図表2)は4月以降4%台の上昇)を続ける下で、家計調査の「実質消費支出」、日銀推計の「実質消費活動指数+」(図表2)などは、前月比弱含みで推移してきたが、8月は久し振りに微増した。しかし、消費者の姿勢を示す「消費者態度指数」(消費動向調査)は、8月に続き9月も低下しており、物価上昇の影響は根強く、8月の消費増加のみで消費が立ち直りつつあると見るのは早計であろう。
 この間、8月の就業者と完全失業者は共に微増し、完全失業率は2.7%で横這いであった(図表2)。8月の賃金は、名目では前年比+1.1%と増加したが(図表2)、実質では同−2.5%と17か月連続して低下を続けている。

【設備投資は本年度計画が高い伸びとなっている割には、足許の動きが鈍い】
 投資動向を見ると、本年度の設備投資計画(土地投資額を除き、ソフトウェア投資を含む)は、9月調査「日銀短観」が前年比+13.1%増、7〜9月期調査「法人企業景気予測調査」が同+11.2%と、いずれも3か月前の前回調査よりも上方修正され、また前年度実績よりも高い伸びを示している。超金融緩和の下、ソフトウェア・研究用開発投資の大幅増加も加わってかなりの増加を計画している。
 足許の機械投資の動向を反映する資本財出荷(除輸送機械)は、4〜6月期に前期比+3.7%と大きく伸びたあと、その反動もあってか、7月は前月比−4.6%の減少、8月は同+1.5%の小幅増加と足踏みを続けている(図表2)。先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、6月に前月比+2.7%と増加したあと、7月は同−1.1%、8月は同−0.5%と2か月連続して減少した(図表2)。

【公共投資は増勢持続、民間住宅投資は頭打ち】
 大手50社の建設工事受注動向を見ると、4〜6月期は民間(前年同期比+10.8%)、公共(同+24.0%)とも大きく伸びたあと、7月と8月は民間が反動減(前年同月比−10.0%、−10.0%)となり、公共は大幅に続伸(同+82.7%、同+33.0%)している。
 以上のように投資動向は、民間では設備投資計画の割には今のところ実績に勢いが見られないが、公共投資は引き続き増勢を続けている。
 住宅投資は、GDP統計ベースで昨年10〜12月期から本年4〜6月期まで3期続けて緩やかな増勢を辿ってきたが、先行指標の新設住宅着工戸数が本年1〜3月期をピークに本年8月までやや弱含みで推移していることからみて、7〜9月期以降、頭打ちから緩やかな減少傾向に転じる可能性が高い。ここでも資材高騰など物価上昇の影響が窺える。

【8月の貿易・サービス収支の赤字はやや拡大】
 最後に外需の動向を見ると、GDP統計の「純輸出」に対応する国際収支統計の貿易・サービス収支は、貿易収支とサービス収支のいずれも赤字を拡大したため、8月は9942億円の赤字と最近5か月間で最大の赤字を記録した(図表2)。貿易収支の赤字拡大は、輸出の減少がやや大きかったためである。
 LNG、原油など鉱物性燃料の数量・価格双方の上昇に伴う輸入著増によって生じた本年1〜3月期までの貿易収支の大幅な赤字拡大は、4〜6月期以降収まってきたが、8月は輸出の減少から一時的に赤字はやや拡大した。しかし、1〜3月期以前に比べれば赤字幅は小さい(図表2)。
 8月の輸出減少が世界景気の減速を反映した趨勢的な動きの始まりか、一時的な落ち込みかはまだ分からないが、9月上中旬の通関ベースでは、輸出は前年比+4.4%と増えており、今後の動きが注目される。