2023年9月版
インフレのデフレ効果で下期に入り景気回復は足踏み気味

【7月以降国内の景気指標は一斉に下振れ】
 4〜6月期の実質GDP(2次速報)は、前期比+1.2%増(年率+4.8%増)、前年同期比+1.6%増と、まずまずの回復となったが(図表3)、内外需の内訳を見ると、前期比増加に対する外需の寄与率が7割強、内需の寄与率が3割弱と内需が弱い。
 7月以降、この内需の弱さが一段と目立ってきた。7月の「家計調査」の季調済み実質消費支出は前月比−2.7%と大きく下がり、7月の「景気動向一致指数」は、輸出数量指数が増加しているにも拘らず、内需関連指数の弱さから、前月比−1.1%と6か月振りに下落に転じた。
 「消費動向調査」の「消費者態度指数」は、昨年12月から上昇を続けていたが、8月は9か月振りに低下した。8月の「景気ウォッチャー調査」の「現状判断DI」も、前月比低下した。
 このような内需を中心とする景気回復の足踏みに共通する背景は、いわゆる「インフレのデフレ効果」である。振れの大きい生鮮食品のほか、昨年来の輸入コストプッシュの中心であるエネルギー関連価格を除いた全国消費者物価(いわゆるコアコアCPI)の前年比は、本年4月以降4%台の上昇が続いているが(図表2)。これは現在の物価上昇の主因が輸入インフレではなく、予想物価上昇率の上昇に伴う企業の値上げ態度の積極化という「国産インフレ」によるものであることを示している。消費者はそれを肌で感じ、当面の実質賃金の減少(7月も前年比−2.5%)に合わせて、消費態度を慎重化し始めていると見られる。
 輸入インフレには皆で耐えるほかないが、国産インフレならば国内政策で対処する余地がある。そうしないと、下期以降の景気回復の足取りもあやしくなってこよう。

【内需を中心に生産、出荷は一進一退、輸出は緩やかな増勢】
 7月の鉱工業生産と出荷は、前月比、夫々−2.0%、−2.1%と前月増加のあと再び減少し、このところ一高一低を繰り返している(図表1)。8月と9月の製造工業生産予測調査は、前月比+2.6%、同+2.4%と2か月連続の上昇予測となっている。仮に鉱工業生産の実績がこの予測と同じになったと仮定すると、7〜9月は前期比+1.4%と4〜6月期(同+1.4%)に行き2四半期連続の上昇となるが、このところ鉱工業生産の実績は製造業生産予測の伸びを下回り続けているので、果たしてどうなるであろうか。
 一進一退を繰り返しながら緩やかに増加している業種の中心は、電気・情報通信機械、電子部品・デバイスなどである。
 出荷を内外需に分けてみると、輸出は5月に一度落ち込んだ以外は年初から毎月増加しており、一高一低のうちに弱含みに推移しているのは国内向け出荷である。国内向け出荷に輸入を加えた国内総供給も、一高一低のうちに6、7月はやや弱含みとなっている。

【大幅な物価上昇の下で個人消費は減少傾向】
 国内需要の動向を見ると、4〜6月期の実質GDP統計の消費支出は、前期比−0.7%と3四半期振りの減少となった(図表3)。
 7月の実質消費活動指数(日銀推計)は前月減少のあと再び増加したが、1〜3月の平均には届いていない(図表2)。7月の「家計調査」(2人以上の世帯)の実質消費指数は、前月に久方振りに増加したあと7月は前月比−2.7%とやや大きく下落した。8月の消費動向調査の消費者態度指数は、前述した通り、9か月振りに低下した。
 7月の現金給与総額は前年比+1.3%と増加したが(図表2)、消費者物価が大きく上昇を続けているため(図表2)、実質賃金は前年比−2.6%と減少を続けている。
 7月は就業者が減少し、完全失業者が増え、完全失業率は2.7%に上昇した(図表2)。転職の増加に伴う一時的な動きか雇用悪化の始まりか、もう少し見る必要があろう。
 実質GDP統計の住宅投資は、昨年10〜12月期から回復に転じており、4〜6月期は前期比+2.6%とやや大きく増加した。建築資材価格の上昇を見越した着工急ぎの気配がある。

【4〜6月期の設備投資は下方修正】
 実質GDP統計の企業設備投資は、4〜6月期の2次速報で前期比0.0%から同−1.0%に下方修正された(図表3)。4〜6月期の「法人企業統計」で、季調済み設備投資が前期比−1.2%であったことを反映したものであろう。
 機械投資の動向を反映する資本財出荷(除、輸送機械)は、4〜6月期に前期比+3.7%と3四半期振りにやや大きく増加したあと、7月は前月比−4.5%の減少となった(図表2)。先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、6月に前月比+2.7%と増加したが、4〜6月期全体では前期比−3.2%の減少となった(図表2)。
 「日銀短観」や「法人企業景気予測調査」の本年度設備投資計画が2桁の伸びとなっている割には、このところの設備投資の動きが弱いが、これも物価上昇と関係があるのか、十分注意して見ていく必要がある。

【鉱物性エネルギー原料の輸入急増と急減がGDP統計を攪乱】
 最後に外需の動向を見ると、4〜6月期実質GDP統計の実質輸出は、前期比+3.1%の増加となったあと、7月の国際収支統計の輸出も前月比+1.6%と続伸した。
 他方、4〜6月期実質GDP統計の実質輸入は、前期比−4.4%と大きく減少し、GDP全体の増加に対する寄与度は+1.1%(寄与率91.6%)と極めて大きかった。国際収支統計の輸入は、昨年10月をピークに本年5月まで−23.6%下落したあと、6〜7月は+4.0%と下げ止まった。輸入下落の中心は、石油、石炭、LPGなどの鉱物性エネルギー原料である。
 一昨年10〜12月期頃から昨年10〜12月期頃にかけて急増した鉱物性エネルギー原料の輸入が、本年4〜6月期以降、逆転して急減している。これがGDP統計の「純輸出」の急減と急増という形で成長率を攪乱した。22暦年と22年度の実質成長率は、+1.0%と+1.4%であるが、輸入急増のマイナス寄与度を差し引くと、夫々+2.5%、+2.8%とかなり高くなる。反面、本年1〜3月期と4〜6月期は、輸入急減のプラス寄与度を調整すると、+0.8%(年率3.2%)と+1.2%(同4.8%)であったものが+0.2%と+0.1%にすぎなくなる。
 本年上期の景気回復の実勢は決して強くないので、7月以降の景気回復についても、インフレのデフレ効果の悪影響などに十分な注意が必要である。