2014年2月版
家計消費と設備投資の立ち直りから10〜12月期は高めの成長

【10〜12月期の鉱工業生産は高い伸び】
 昨年の日本経済の実質成長率(前期比年率換算)は、1〜3月期に+4.5%、4〜6月期に+3.6%と高めの成長を記録したあと、7〜9月期は家計消費の伸び率の鈍化、設備投資の頭打ち、純輸出のマイナスなどから+1.1%に鈍化したが(図表3)、10〜12月期は家計消費と設備投資の立ち直りによって国内需要が確りと回復したため、再び比較的高い成長率となり、2013暦年の成長率は+2.0%、(IMF見通し)に近くになる公算が高い。
 12月の鉱工業生産は前月比+1.1%の増加となり、10〜12月期をくくると前期比+1.9%と昨年中の四半期の伸びとしては最も高くなった。製造工業生産予測調査によると、1月は前月比+6.1%と更に高い伸びとなったあと、2月は同+0.3%と頭打ちになる予測である。鉱工業生産の実績がこの予測と同じ伸びをすると、1〜2月平均は10〜12月平均を+7.6%増と大幅に上回ることとなる(以上図表1)。
 このところ鉱工業生産の実績の伸びは、製造業生産予測の伸びを常に下回っているので、1〜2月がこのように高くなるとは思えないが、少なくとも1月までは10〜12月の勢いが続く可能性は高い。業種別に見ると、この増勢は汎用・生産用・業務用機械の寄与が最も大きく、続いて輸送機械、電気機械などが寄与している。

【資本財(除輸送機械)と耐久消費財の国内向け総供給が著増】
 12月の鉱工業出荷は前月比+0.6%の増加にとどまったが、10〜12月期をくくって見ると、前期比+3.4%と比較的高い伸びとなった。これを国内向けと輸出に分けると、12月は国内向けが前月比+0.5%の増加、輸出が−4.9%の減少であった。もっとも、10〜12月期をくくって見ると、国内向けが前期比+4.2%の増加に加えて、輸出も同+3.2%の増加であった。
 この国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給を見ると、輸入が増加しているため12月の前月比は+2.6%増、10〜12月の前期比は+4.1%増と共に確りした伸びとなった。
 10〜12月期の前期比を財別に見ると、耐久消費財の+9.5%増と資本財(除輸送機械)の+6.2%増が目立って高い伸びをしている。業種別に見ると、輸送機械の+10.0%、情報通信機械の+8.1%、電気機械の+6.1%、非鉄金属の+12.7%が目立つ。
 前回の<月例景気見通し>(2014年1月版)で指摘したように、4月の消費税率引き上げを前に、乗用車や家電製品などの買い急ぎが始まっているためであろう。

【10〜12月期の家計消費は確りした伸びを回復】
 国内の需要動向を見ると、12月の家計調査の実質消費支出(全世帯、季調済)は、前月比−0.7%の減少となったが、10〜12月比をくくって見ると前期比+1.1%の増加と底固い動きをしている(図表2)。
 販売統計では、小売業販売額の前年比が12月は前年比+2.6%、10〜12月は同+3.0%と共に増加した。12月の乗用車新車登録台数は季調済年率で542.7万台、前月比+10.0%増、前年比+26.5%増と記録的高水準に達した。家電販売額も、10月は前年比+5.6%、11月は同+8.0%と3年振りに前年水準を大きく上回った(因みに2011年の前年比は−13.3%減、11年は同−13.7%減)。言うまでもなく、消費増税前の駆け込み需要である。

【消費者物価のインフレ率が徐々に高まり、実質の可処分所得と賃金は前年比マイナス】
 他方、12月の家計調査の実質可処分所得(勤労者世帯)は、前年を−2.1%下回っている。12月の現金給与総額(名目)は時間外手当と賞与の増加によって前年比+0.8%の増加となったが、12月の消費者物価が前年比+1.6%の上昇となっているため、実質賃金が前年比−1.1%の減少となっていることが、実質可処分所得減少の主因とみられる。
 雇用は、引き続き緩やかに改善している。12月の「労調」の就業者と雇用者、「毎勤」の常用雇用は、前年比それぞれ+1.5%、+1.7%、+1.0%の水準にあり、10〜12月期の季調済み前期比は、それぞれ+0.5%増、+0.2%増、+0.4%増とジリジリ増加している。
 12月の完全失業率(季調済)は3.7%と前月比−0.3%ポイント低下し、有効求人倍率(同)は1.03と前月比0.03上昇するなど、いずれも改善した。

【住宅投資と公共投資の堅調に加え、設備投資も立ち直る】
 次に投資動向を見ると、足許の機械設備に対する投資を示す資本財(除輸送機械)国内総供給(国産品の国内向け出荷+輸入)は、12月に前月比+2.2%増、10〜12月は前期比+6.2%増と堅調な伸びを示した(図表2)。
 先行きを示す機械受注(民需、除船舶・電力、季調済)は、11月に前月比+9.3%増と大幅な伸びを示し、10月に続き2か月連続の増加となった(図表2)。10〜11月の平均は7〜9月平均を+5.7%上回っており、10〜12月の実積は見通し(前期比−2.1%)よりも上振れしそうである。
 新設住宅着工戸数は、12月に前月比+1.7%増、10〜12月の前期比は+4.7%増と、消費増税前の駆け込みもあって引き続き伸びており(図表2)、住宅投資は10〜12月期も順調に増加していると見られる。これは7四半期の連続上昇である。
 公共投資は、公共機関からの建設工事受注(大手50社)が12月も前年比+31.6%増、10〜12月は同+37.1%増と引き続き伸び率を高めていることから見て、10〜12月期も5四半期連続の増加になると見られる。

【10〜12月期の純輸出も前期に続きマイナスか】
 最後に外需の動向を見ると、輸出(季調済)は12月に前月比+1.7%増、10〜12月期は前期比+3.1%増と徐々に回復しているが、輸入(同)は12月に前月比−0.6%と減少したものの、10〜12月期を合計すると前期比+5.6%と輸出を上回って伸びており、貿易収支の悪化が続いている。このため10月の11月の経常収支(同)は、小幅の赤字に転落した。
 他方、10〜12月の円ベースの輸出入物価をみると、輸出が前期比+0.1%上昇、輸入が同+2.2%上昇となっており、前記の名目ベースの輸出入増加率(+3.1%増対+5.6%増)を実質ベースに換算しても、輸入の伸びの方がやや高い。
 前述の鉱工業製品の10〜12月期の輸出入を見ても、輸出は前期比+3.2%増、輸入は同+4.9%増と輸入の伸びの方が高い。
 10〜12月期のGDPの純輸出は、前期に引き続き、成長に対しマイナスの寄与となった公算が高い。

【10〜12月期は国内需要の伸びが高まり高めの成長か】
 以上を総括すると、10〜12月期の実質GDPは、国内需要が家計消費、設備投資、住宅投資、公共投資と揃って増加するため、海外需要は前期に引き続きマイナスの寄与となっても、かなり高めの成長率となる可能性が高いと見られる。