2014年1月版
消費増税前の駆け込み需要が徐々に表面化、生産は耐久消費財中心に増産体制へ

【耐久消費材中心に12月以降増産へ】
 本年4月の消費税率引き上げを控え、駆け込み需要に備えた増産が乗用車、パソコン、電気冷蔵庫など耐久消費財で始まり、出荷も耐久消費財が大きく伸び始めた。末端でも、乗用車新車登録台数や家電販売額が増加し始めている。
 11月の鉱工業生産は前月比+0.1%の微増にとどまったが、製造業生産予測調査によると、12月は同+2.8%、1月は同+4.6%と2か月連続して急増する予測である(図表1)。仮に12月と1月の鉱工業生産の実績がこの予測通りに伸びると、1月の水準は東日本大震災で落ち込む直前の水準を上回ることになる(図表1)。実際は、実績が予測を下回ることが多いので、これ程の急テンポでは増えない可能性があるが、しかし生産増加のテンポが12月から早まることは確かであろう。
 生産急増をリードする業種を見ると、輸送用機械(普通乗用車、小型乗用車など)、情報通信機械(デスクトップ型パソコンなど)、電気機械(太陽電池モジュール、電気冷蔵庫など)など、消費税率引き上げ前の駆け込み需要の対象商品である。

【耐久消費財と建設財の国内向け出荷は確りした伸び】
 11月の鉱工業出荷は、前月比−0.1%の微減であったが、このうち輸出を除いた国内向け出荷は同+0.8%の増加であった。これに輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が同−1.5%の減少となったため、同−1.0%の減少となった。
 しかし、その中にあって、建設財と耐久消費材の国内向け総供給は、それぞれ前月比+2.1%と+2.3%の増加となった。住宅投資、公共投資の底固い伸びと、消費増税前の耐久消費材に対する駆け込み需要によるものであろう。
 業種別に見ると、建設関係では鉄鋼(同+12.8%)、窯業・土石(同+2.5%)、耐久消費材では輸送用機械(同+5.1%)の国内向け総供給の伸びが目立っている。

【消費者物価の上昇で実質ベースの消費は不冴えながら、乗用車新車登録台数と家電販売額には消費増税前の駆け込みの動き】
 需要動向を見ると、11月の家計消費は、「家計調査」の名目消費支出(全世帯)が前年比+2.1%の増加、小売業売上高が同+4.0%の増加といずれも伸びている。しかし実質ベースでは消費支出(同)が、前年比+0.2%と僅かな増加にとどまり、季調済み前月比では、−0.3%の減少となった(図表2)。
 これは、消費者物価の上昇率がジリジリと高まっているためで、11月の全国消費者物価の前年比は、総合で、+1.5%、除生鮮食品で+1.2%と1%台に乗った(図表2)。
 その中にあって、乗用車新車登録台数と家電販売額は伸びを高めているのが目立つ。前者は9月からの前年比の伸びが2割近くに高まっていたが、11月には季調済み年率で493.2万台に達した。これはエコカー補助金の関係で急激に伸びた12年1〜3月期(497.3万台)の水準に匹敵し、それ以降は記録されたことのない高さである。また後者の家電販売額は11年8月以来前年水準を下回っていたが、直近の最新計数である10月には前年比+5.6%、季調済み前月比+6.6%とにわかに伸び始めた。
 家電販売額と新車登録台数には消費税率引き上げ前の駆け込み需要の走りが認められる。

【可処分所得と現金給与総額は名目で増加、実質で減少、緩やかな雇用改善は続く】
 11月の「家計調査」の可処分所得(勤労者世帯)と「毎勤」の現金給与総額の前年比は、家計消費支出と同じように消費者物価上昇率の高まりの影響を受け、名目ではプラス、実質ではマイナスとなった。
 すなわち、可処分所得と現金給与総額の前年比は共に名目では+0.5%、実質では−1.4%となった(図表2)。
 他方、雇用情勢の改善は、引き続き徐々に進んでいる。11月の「労調」の就業者と雇用者、「毎勤」の常用雇用者は、前年比それぞれ+1.2%、+1.1%(図表2)、+1.1%の増加、季調済み前月比はそれぞれ+0.4%、+0.2%、+0.1%の増加であった。

【設備投資、住宅投資、公共投資は揃って底固い伸び】
 投資動向を見ると、足許の機械に対する投資を示す11月の資本財総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計、除輸送機械)は、前月に急増(前月比+10.1%)した反動で、同−3.3%となった(図表2)。しかし、10〜11月平均は7〜9月平均比+6.3%の大幅増加であり、設備投資は緩やかに増加を続けていると見られる。先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)も、7〜9月期に前期比+4.3%の増加となったあと、10月は7〜9月平均比+1.0%の増加と引き続き増勢を保っている(図表2)。
 住宅投資は、新設住宅着工戸数が9月から11月まで100万戸(年率)を超える高水準を続けていることから見て(図表2)、12年4〜6月期以降の増勢が続いていると見られる。
 公共投資も、11月の公共建設工事受注額が前年比+30.3%と伸び率は前月(同+56.1%)より縮小したものの高い増加率を示しているので(図表2)、引き続き増勢を保っていると見られる。

【11月の貿易赤字は前月比拡大】
 最後に外需の動向を見ると、通関ベースの11月の輸出は前年比+18.4%、季調済み前月比−0.2%、輸入は前年比+21.1%、季調済み前月比+3.5%となっており、前年比でも前月比でも貿易収支の赤字は拡大した。
 他方、11月の円ベースの輸出物価は前月比+1.2%、輸入物価は同+1.5%と交易条件は悪化しており、上記の名目ベースの貿易収支を実質ベースに換算しても、11月は前月比で悪化したと見られる。
 主因は引き続き原油とLPGの輸入が数量ベースで増加し、価格も上昇しているためである。