2012年6月版
家計消費、公共投資に加え、設備投資、住宅投資も立ち直りの気配。外需は依然として不振
【1〜3月期の成長率は年率+4.7%へ上方修正】
消費主導の緩やかな内需回復が続いており、1〜3月期にやや下振れした設備投資にも4月に入って立ち直りの気配が窺われる。他方、世界景気の減速を背景に、外需の回復は依然として遅々としている。
1〜3月期実質GDPの2次速報値が公表され、前期比+1.2%(年率+4.7%)と高い成長率となった1次速報値(同+1.0%、同+4.1%)を更に上方修正する形となった。これは1次速報値の後に明らかとなった1〜3月期の法人企業統計の設備投資を受けて、実質GDPベースの設備投資の前期比マイナス幅が1次速報値の−3.9%から2次速報値の−2.0%に縮小し、成長率に対する寄与度が−0.5%ポイントから−0.3%ポイントへ、0.2%ポイント上方修正されたことが主因である。
これに伴い、12年度の平均成長率のゲタは+1.2%から+1.3%へ僅かに上振れし、12年度の2%台成長達成は比較的容易になったと見られる。
【鉱工業生産に回復頭打ちの気配】
4月の鉱工業生産は前月比+0.2%の微増にとどまり、製造工業生産予測調査の5月は同−3.2%の減少、6月は同+2.4%の増加となった(図表1)。鉱工業生産の実績がこの予測通りになると仮定すると、4〜6月期の平均は前期比−0.8%と大震災の影響から立ち直った昨年7〜9月期以降4四半期振りに減少となる。
他方、4月の鉱工業出荷は前月比+0.9%の増加となったが、その内外別内訳を見ると、輸出向けは同−6.8%と大きく低下し、国内向けは同+3.3%と確りした伸びとなった。
この国産品の国内向け出荷に輸出を加えた国内向け総供給は輸入が生産財を中心に同−4.7%と大きく落ちたため、同+1.3%の増加にとどまった。資本財は、国産品が同+10.7%増、輸入が同+4.6%増、合計総供給は同+11.4%と高い伸びを示している。
【家計消費は乗用車を中心に着実な増加】
4月の国内需要の動向を見ると、まず家計消費は「家計消費」「販売統計」共に底固く推移している。「家計調査」の4月の消費水準指数は、前年比+2.7%増と3月(同+3.5%増)よりは増加幅を縮めたものの、1〜3月平均(同+0.1%)を大きく上回った伸びを示した(図表2)。
「販売統計」では、4月の小売業販売額が前年比+5.8%増と1〜3月平均の+5.2%増をやや上回った。また4月の乗用車新車登録台数は、前年比+99.5%増と前月の同+76.3%増、1〜3月平均の同+50.3%を更に上回って大きく伸びた。これは、前年水準が3月、4月に東日本大震災の影響で大きく落ち込んだことの反動もあるが、4月の登録台数の季節調整値479.2万台(年率)は、昨年10〜12月期平均の411.8万台(同)を大きく上回り、1〜3月期平均(497.3万台)並みの高水準である。エコカー補助金の予算がなくなるまで、乗用車販売の好調は続くと見られる。
実質GDP統計で昨年4〜6月期から4四半期続いている家計消費の順調な伸びは、4〜6月期も続くと見られる。
【雇用の改善は遅れ気味】
「家計調査」の実質可処分所得(勤労者世帯)は、4月も前年比+2.3%と4か月連続して前年水準を上回った(図表2)。 4月の「毎勤」の実質賃金も前年比+0.2%と、3月(同+0.3%)に続き2か月連続で前年を上回った。
他方、4月の雇用は「労調」の就業者、雇用者は前年比それぞれ−0.4%、−0.3%と5か月連続して前年水準を下回っている(図表2)。他方「毎勤」の常用雇用者は、非製造業を中心に4月も前年比+0.7%と伸びている。
総じて見れば、雇用の改善は遅れており、可処分所得の僅かな立ち直りは賃金に支えられているようだ。また、消費の堅調は所得の回復よりも消費性向の上昇による面が少なくない。その意味では、エコカー補助金が終わった後の消費の反動減が懸念される。
【設備投資は4〜6月期以降再び増勢を取り戻そう】
足許の機械に対する設備投資動向を示す資本財(除、輸送機械)の総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、4月に前月比+4.4%と3四半期振りにやや大きく伸びた(図表2)。四半期別に見ると、1〜3月期は4四半期振りに前期比マイナスとなり(図表2)、実質GDP統計の設備投資も1〜3月期に前期比−2.1%の減少となったが、4月の資本財総供給は1〜3月期平均を+1.5%上回っている。4〜6月期の実質GDP統計の設備投資は再び前期比プラスに戻る可能性が高くなった。
先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)も、1〜3月期は前期比+0.9%の増加となった(図表2)。
【住宅投資と公共投資は復旧・復興需要と補正予算の執行で増勢を辿ろう】
住宅投資は、1〜3月期の実質GDP統計で3四半期振りのマイナスとなったが、新設住宅着工戸数が1〜3月期の前期比+8.3%の増加に続き、4月も1〜3月平均を+3.9%上回っているので、4〜6月期にはGDPベースで再び増加する公算が高い。
公共投資は、1〜3月期の実質GDP統計で前期比+3.8%の高い伸びとなった。先行指標の公共建設工事受注額(50社)の前年比は、昨年7〜9月期から高い伸びに転じ、本年1〜3月期は前年比+28.7%、4月は同+22.1%となった(図表2)。前年が東日本大震災の影響で一時的に低くなったことの反動もあるが、補正予算の執行本格化が背景にあると見られる。公共投資は4〜6月期も増加を続けよう。
住宅投資と公共投資の背景には、復旧・復興需要と補正予算の執行があるので、本年度中は毎四半期増加傾向を辿ると見られる。
【4月の経常収支黒字幅は縮小】
最後に外需の動向を見ると、4月の貿易・サービス収支(季節調整済み)は8498億円の赤字と前月(同5049億円の赤字)に比べ赤字幅を拡大したため、経常収支(同)は2886億円の黒字と前月(同7855億円)および1〜3月平均(同5935億円)に比し黒字幅が大きく縮小した。
貿易収支の1835億円の前月比赤字幅拡大は、輸出が前月比1909億円減少したためで、輸入は前月比74億円の減少とほぼ横這いであった。輸出の減少は、アジアNIEs、中国、西欧の各地域向けで大きい。
輸入は、このところ輸入価格が火力発電拡大のための高値のLNG買付で上昇しているために膨らんでおり、数量ベースで見ると、4月の実質貿易収支の悪化はさほど大きくない。因みに数量ベースの前年比では、輸出が+4.7%と輸入の+1.9%を上回っている。