2010年10月版
内需は目先堅調、外需は弱まる兆し
【内需は増加しているが輸出が減少したため生産は3か月連続で低下】
エコカー補助金期限切れ前の駆け込み需要と猛暑効果によって、7月に続き、8月も家計消費がかなり伸びたため、7〜9月期の内需は4〜6月期を大きく上回る増加率を示し、成長にかなり寄与したと思われる。
まず8月の鉱工業生産と出荷は、それぞれ前月比−0.3%、同−0.5%と、生産は3か月連続で、出荷は2か月連続で減少した。また、製造工業生産予測指数は、9月に前月比−0.1%、10月に同−2.9%と連続して下落する見込みである(図表1)。
9月の実績が予測通りになると、7〜9月期は前期比−1.1%と6四半期振りの減少となる。
8月の鉱工業出荷(前月比−0.5%)の内訳を内外需別にみると、国内向けは同+1.6%の増加であるが、輸出が同−7.9%の減少となったため、全体が同−0.5%の減少となっている。
また、8月の水準を4〜6月平均と比べてみると、国内向けは+0.4%の増加であるが、輸出が同−7.4%とやや大きく落ちているため、全体も−1.0%の減少となった。
【自動車購入を中心に7〜9月期の家計消費は高い伸び】
国内需要の動向をみると、まず家計消費は、8月の小売販売額が前年比+4.3%と前月(同+3.8%)や4〜6月期(同+3.7%)に比べて一段と増加率を拡大した。
「家計調査」の消費水準指数(全世帯)も、8月は前年比+2.0%と前月(同+1.2%)よりも増加幅を拡大した(4〜6月期は同−0.2%の減少、以上図表2)。
8月の実質消費支出(全世帯)の内訳をみると、前年比+1.7%の増加のうち、+1.09%は自動車購入、自動車保険料など自動車関係費の増加によるものである。
「販売統計」をみると、8月の乗用車新車登録台数は、前年比+40.1%、前月比+24.7%の著増となっている。
エコカー補助金が9月上旬で終了したため、8月中に大きな駆け込み需要が発生した。その反動で、9月の乗用車新車登録台数は前年比−3.2%、前月比−31.4%の大幅反動減となっている。
しかし、7〜9月の合計は、前年比+13.4%、前期比+3.8%となっており、乗用車需要が7〜9月期の家計消費を大きく増加させたことが窺われる。
【10〜12月期の家計消費は反動減となるか】
しかし、この反動で9月以降の家計消費が停滞する懸念がある。事実、下表の通り、7月と8月の平均消費性向(勤労者世帯、季節調整済み)は、76.1%、75.3%と、最近の72〜74%台に比してやや高いので、10〜12月期にかけて消費性向が低下する可能性がある。
もっとも、消費性向が低下しても、可処分所得が増加すれば、消費支出の低下は大きくならない。しかし、実質可処分所得は、下表の通り、昨年10〜12月を底にジリジリと上昇してはいるが、7月と8月は4〜6月期を下回った。
これは、背後にある雇用、賃金の回復が遅々としているためである。
【雇用と所定内給与の回復は遅々としている】
8月の雇用は、「労調」の就業者と雇用者が前年比それぞれ−0.3%と−0.0%、「毎勤」の常用雇用者が前年比+0.5%、前月比0.0%と回復は遅れている。ただ、完全失業者数が前月比−2.0%の減少となったため、完全失業率は5.1%と前月に比し0.1%ポイントの低下となった(図表2)。
他方、「毎勤」の実質賃金は、4〜6月に前年比+2.2%と増加したあと、7月は同+2.4%、8月は同+0.9%の増加となった(図表2)。
6月と7月の前年比増加率拡大は、夏期賞与の回復によるものである。その他の月の増加は、時間外手当の増加によるもので、所定内給与に回復の動きはみられない。
【設備投資は緩やかな増加傾向を維持】
次に投資動向をみると、足許の設備投資動向を示す資本財(除輸送機械)の国内総供給(国内向け出荷+輸入)は、8月に前月比−0.5%の微減となったが、7〜8月平均の4〜6月平均比は+2.0%と昨年7〜9月期以来の増加傾向を続けている(図表2)。
先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力・携帯電話)は7月に4〜6月比+5.4%の増加となった(図表2)。8月の計数はまだ公表されていないが、8月の国内からの工作機械受注額が前年比4割増と10か月連続のプラスを続け、また8月の国内からの産業機械受注額も前年比8割増と2か月連続のプラスとなった。
設備投資の回復基調は確りしているとみられる。
【住宅投資に立ち直りの兆し】
たま、ここへきて住宅投資が再び立ち直りの動きを強めている。8月の新設住宅着工戸数(季節調整済み、年率)は、829千戸と前月比+7.4%、4〜6月平均比+9.1%の大幅増加となった。7〜8月平均の4〜6月平均比も+5.3%の増加である(図表2)。本年5月まで落ち込んできた住宅着工は、住宅投資へのエコポイント制度適用、住宅金融支援機構の低利融資「フラット35」などの政策効果によって、立ち直ってきた。
【7〜8月の実質貿易収支は減少】
最後に外需の動向をみると、8月は輸出(季節調整済み)が前月比−2.3%、輸入(同)が同−2.5%と共に減少した。これを実質に換算すると(日銀推計)、輸出が同−3.9%、輸入が同−1.6%となり、実質GDPベースの純輸出に対応する実質貿易収支は、同−10.4%の減少となった。7〜8月平均の4〜6月平均比も−2.2%の減少である。
9月の動向によっては、7〜9月期の外需の成長寄与度が大きく低下することも考えられる。始めに述べた鉱工業生産、出荷の減少は、このような外需の動向を反映した動きとみられる。
【7〜9月期の成長は内需の寄与度が上昇、外需の寄与度が低下】
以上を総括すると、7〜9月期は、家計消費の一時的に大きな伸びと設備投資の底固い動き、住宅投資の立ち直りなどから、内需が成長にやや大きく寄与するとみられる。
しかし、9月の外需の動向が、7〜8月に続いて弱いと、6四半期振りに外需の成長寄与度が大きく低下し、全体の成長率を引き下げる可能性も否定できない。