2002年11月版

─生産に頭打ち傾向が現れ、先行きに不安─

【生産の回復は頭打ち傾向、在庫率はやや上昇】
 鉱工業生産の頭打ち傾向がはっきりしてきた。
 9月の生産実績は、予測(前月比+0.4%)を下回り、前月比−0.3%の減少となった。10月と11月の予測指数は、それぞれ+1.2%の上昇、−1.4%の下落と概ね横這いで推移する。この結果、図表1を見れば直観的に明らかなように、生産は8月以降11月まで、ほぼ横這いで推移する見込みとなった。
 去る5月の「景気底入れ」宣言の大きな根拠となった生産の回復傾向は、どうやら転機を迎えたようだ。出荷もほぼ同様の傾向を辿っており、在庫率指数は7月を底にやや上昇している(図表1参照)。
 輸出の回復と在庫調整完了に伴なう2月以降の生産上昇傾向は終りつつあるようだ。

【米国向け輸出の減少を主因に輸出の伸びは鈍化】
 生産頭打ちの主因は、輸出の変調である。実質輸出の前月比は、8月−2.9%、9月−1.1%と2ヶ月連続して減少した。7〜9月期平均では、まだ前期比+0.6%の増加となっているが、実質輸入の前期比は+3.3%と実質輸出の伸びを上回っているので、実質貿易収支は前期比−6.1%の減少となった。従って、7〜9月期の実質GDPでは、外需(純輸出)が4四半期振りにマイナスに転じる可能性が出てきた。
 輸出変調の背景は、いうまでもなく米国景気の二番底気配である。米国経済の年率成長率は1〜3月期に5%となりV字型回復かと思わせたが、4〜6月に1%台、7〜9月に3%台と鈍化した。10〜12月期についても、小幅の成長しか見込まれていない。このため日本の対米輸出(実質)は、7〜9月期に前期比−0.6%と3四半期振りに落込んだ。
 もっとも、東アジア向けとEU向けの輸出はまだプラスを保っているので、鈍化はするものの、急激な落込みは避けられそうである。

【可処分所得の減少にも拘らず夏の個人消費は一時的に増加】
 国内需要をみると、個人消費は暑い夏の影響で8月は百貨店・スーパーなどで夏物が売れたが、9月は新型のカメラ付き携帯電話がよく売れたものの、全体としては頭を打った。乗用車新車登録台数(図表2参照)も、7月と8月にはかなり伸びて前年比プラスになったあと、9月は減少して前年比プラス幅を縮小した。
 これは、消費の裏付けとなる個人可処分所得が減少しているため、消費の増加が長続きしないためである。因みに勤労者世帯の家計統計をみると、7〜9月期は可処分所得が前期比−1.7%の減少となったにも拘らず、消費性向の上昇により、消費支出は同+1.0%の増加となった。
 個人所得が減少しているのは、雇用と賃金の悪化が続いているためである。雇用者数は8月も9月も前月比それぞれ−0.4%、−0.5%の減少となり、完全失業率は図表2の通り5.4%の高水準に張り付いたままである。また一人当り名目賃金は、7〜9月平均で前年比−3.4%の減少と前期(同−2.6%)よりも減少幅を拡大した。これは時間外(図表2参照)手当は増加しているものの、夏期賞与が大きく落込んだためである。

【設備投資が下げ止まる可能性も】
 また、住宅投資は引続き減少している。7〜9月期の新設住宅着工戸数は年率111.5万戸にとどまった。これは前年比−6.2%(図表2参照)、前期比−3.9%の大幅減少である。
 他方、企業の設備投資は、7〜9月に下げ止まり気配がみえているが、先行指標に弱い動きもあり、まだ底入れかどうかは判断できない。
 足許の設備投資動向を反映している一般資本財出荷は、図表2に示したように、前年比マイナス幅が前期の−14.6%から7〜9月期の−3.5%に大きく縮小した。季調済前期比は+1.8%と7四半期振りのプラスとなった。この出荷には輸出も含まれているので、7〜9月期の設備投資がプラスになったとは断言できないが、ほぼ横這いになった可能性はある。
 しかし先行指標をみると、機械受注(民需、除船舶・電力)は8月に大きく落ち込んだため(図表2参照)、7〜8月平均(季節済み)の4〜6月平均(同)比は−3.1%の減少となっている。もっとも、9月の計数が判明している建設工事受注(民間)は、7〜9月期の前期比が+6.3%とプラスに転じた。9月の機械受注統計が判明するまでは、先行指標全体を判断することは出来ない。
 なお、公共工事請負額は7〜9月期に前年比マイナス幅を拡大しており、公共投資は弱い。

【7〜9月期はゼロ成長から小幅プラス成長の間か】
 以上のことから判断すると、7〜9月期の実質GDPは、住宅投資と公共投資が引続き減少となる反面、設備投資が久方振りのプラスとなる可能性があり(図表3参照)、個人消費も強含みで横這い圏内の動きとなるため、国内需要全体としてはプラス成長となった可能性がある。
 しかし、これまで成長を支えてきた純輸出(図表3参照)が大きくマイナスに転じると、実質GDP全体としてゼロ成長に近い動きとなろう。もっとも、投資収益の増加が経常収支の黒字を支えると、GDP統計の純輸出は大きくは減らない。その場合7〜9月期は小幅のプラス成長となろう。