2001年1月版

‐ 景気下振れリスクが高まってきた ‐

【株価の低迷で2、3月危機のリスク】
21世紀の幕が上がったが、年明け後の日本経済は一向に冴えない。昨年の12月中頃、6営業日連続して累計1,745円下落した日経平均株価は、年明け後も13千円台にとどまり、はっきりした戻り足を見せていない。株価が14千円前後の水準にとどまっていると、時価会計の下で評価損を計上せざる得ないため、3月末の決算数字が悪くなる金融機関が増えてくる。
平成9〜10年の金融危機とは異なり、今度は第2地銀、信金、信組など中小金融機関と、生保など銀行業以外のノン・バンク業界を中心に、ミニ金融危機が発生するリスクが出てきた。
何とも心配なことである。この株価暴落は平成13年度予算の中味が判明すると同時に起こったにも拘らず、自公保連立政権は平成13年度予算を早く成立させれば景気は立直るなどと呑気なことを言っている。市場が苛立つのも無理はない(このホームページの「最新コメント」欄、"株価低落の背景に平成13年度予算がある"(2000.12.25)参照)。
予算案が衆議院を通過する3月末までは、政府は予算案の修正や補正予算の可能性など新たな財政政策の追加を語ることが出来ない。そこに2月危機、3月危機のリスクがある。

【10〜12月期の生産回復は明確に鈍化】

11月までの生産指数実績と、12月の生産予測指数によって試算してみると、10〜12月期の生産は前期比+0.4%の増加となる。これは4〜6月期の+1.7%、7〜9月期の+1.6%に比してはっきりと鈍化している。
図表1のグラフに示したように、本年1月の生産実績が予測指数の通りに出れば、生産の水準は6ヵ月振りに過去のピーク(8月実績)を抜くが、これはまだ分からない。いずれにせよ、生産の伸びが鈍化していることは確かである。
曜日構成を調節できるX-12ARIMAでより正確に季節調整しても、10〜12月期の生産鈍化傾向に変わりはない。また1月の生産実績が予測指数通りであれば6ヵ月振りに過去のピークを抜くが、これはまだどうなるか分からないという事も同じである。

【10〜12月期の純輸出はマイナスとなる可能性】

他方、実質GDPの方は、図表2に示したように第1次速報値では7〜9月期に前期比0.2%増のプラス成長となっているが、その後判明した7〜9月期の「法人企業統計季報」では設備投資が予想外に弱いので、第2次速報のGDP統計では設備投資の増加率が下方修正され、これにつれて実質GDP全体もプラス成長からマイナス成長に変わる可能性がある(このホームページ「最新コメント」欄、"株価低落の背景に平成13年度予算がある"(2000.12.25)参照)。
このような実質GDPと生産の増勢鈍化は、緩やかな回復を牽引していた設備投資と輸出のうち、輸出が7〜9月期に頭を打ち、10月と11月は若干減少しているからである。貿易統計によれば、7〜9月期の輸出金額は前期比0.9%増とほぼ横這いになったあと、10月と11月の平均は7〜9月期比1.3%減となっている。この間輸入は増え続けているので、これまで成長を支えていた純輸出(図表2参照)は、10〜12月期にはマイナスとなって成長の足を引張る可能性がある。
これは、米国経済の成長減速に加え、韓国、台湾などの東アジア経済の景気に陰りが差してきたためである。

【家計の消費マインドと投資マインドは萎縮したまま】

他方個人消費は、相変わらず不振である。図表3に示したように、10〜12月期は乗用車新車登録台数が前年を上回ったものの、消費水準全体は、10月に前年比+0.3%と微増したあと11月は再び−1.0%と減少している。
新設住宅着工戸数は、図表3のように10月と11月の前年比はプラスとなったが、これは前年の水準が低いためである。10月と11月の平均(季節調整済み)は、7〜9月期の平均よりも0.5%低い。また持家着工の先行指標となる住宅金融公庫申込受理戸数も、第3回融資分(昨年10月30日〜12月22日受付)で99年度第3回比−4.5%、2000年第2回比−30.7%と大きく減少している。
家計の消費マインドと投資マインドは、引続き萎縮したままである。11月の完全失業率が再び4.8%に悪化(図表3参照)したことにも窺われるように、雇用情勢は依然として厳しいためである。

【設備投資が一人で景気回復を引張っている】

企業の設備投資は、前述したように、7〜9月期GDP統計の第2次速報値で下方修正され、伸び率は鈍化する。しかし、12月調査の「日銀短観」で、平成12年度の設備投資が大きく上方修正され、前年度に比べて全規模製造業で+15.3%、同非製造業で−0.3%、全体で+3.6%となっていることからみて、本年度下期に設備投資が失速する懸念はない。10月と11月の一般資本財出荷も、図表3に示したように、前年を大きく上回っている。
先行指標である機械受注(民需、除船舶・電力)も、図表3に示したように、前年比で7〜9月期+25.3%と著増したあと、10月も+24.5%と高い伸びを維持している。先行き設備投資の伸びが鈍化するリスクはあるものの、それは来年度に入ってからであろう。 他方公共投資は、図表2に示してきた通り、7〜9月期に前期比−10.7%と大きく減少したが、図表3に示した公共工事請負額が11月まで前年を大きく下回っていることから判断すると、立直る可能性はない。

【景気回復失速のリスクが徐々に高まってきた】

以上のように、景気は設備投資の孤軍奮闘によって、何とか緩やかな回復を維持しているが、この先下振れするリスクが徐々に高まっている。
第1に、前述の通り、7〜9月期GDPの第2次速報値は、プラス成長からマイナス成長に修正される可能性が高い。これは3四半期振りのマイナス成長であり、平成12年度の平均成長率を押し下げる。政府も昨年度の1.4%成長のあと、12年度は1.2%成長に鈍化すると予測している。
第2に、これも前述の通り、回復を引張ってきた輸出が頭を打ち、鉱工業生産の伸びが鈍化してきた。これは当然企業収益に響く。
第3にその兆が、12月調査の「日銀短観」に出ている。大企業製造業の業況判断DIの改善が2年振りにストップし、先行き悪化が見込まれている。
第4に、以上の第1〜3全体を背景に株価が大幅に下落し、評価損を通じて景気に悪影響を及ぼそうとしている。
第5に、政府は平成13年度予算が衆議院を通過する本年4月まで、新しいマクロ政策の手をまったく打つことが出来ない。
このような第1〜5の諸条件を考えると、景気の先行きはまったく余断を許さない。