1997年10月版

8月の生産(速報)はマイナス2.2%と予測(マイナス0.9%)を上回る落ち込みとなり、9月の予測を含む7〜9月の生産は前期比0.4%のマイナスになると見込まれる。これは在庫減らしの生産調整が本格化しているためである。それにも拘らず、出荷の落ち込みが更に大きいため、在庫率は118.8に達し、前回不況期のピーク(93年10月123.6)に接近している。(図表1参照)
本格的な在庫調整局面といえよう。自動車、家電など加工組立産業から始まった生産調整は化学、鉄鋼など素材産業の在庫増加を招き、そこでも生産調整の動きが広がっている。
このような在庫リセッションの広がりは、7〜9月に入っても個人消費、住宅投資、公共投資に回復の動きが見られないからである。8月になっても、百貨店・スーパー売上高、消費水準指数、新車登録台数、親切住宅着工戸数、公共工事請負額などは、前年水準を下回ったままである。(図表2参照)
このため、9月調査の日銀短観では、製造業の「業況判断DI」が年末まで悪化を続ける予想となっている。
また非製造業、とくに中小企業では、「業況判断DI」が前回不況期のボトム(93年10〜12月)並みに悪化してきた。(図表3参照)
小売、卸売、建設などが、9兆円の国民負担増と公共事業抑制からなる97年度デフレ予算の悪影響をまともに受けているからである。橋本総理は本会議場の答弁で、年度下期には景気回復が確りしてくると述べているが、在庫調整局面は少なくとも年末までは続くし、その中で設備投資マインドが弱くなってくると、来年に向って本格的な景気後退につながっていく可能性が出てきた政府・与党が今国会に提出した「財政構造改革法案」が成立し、今後3年間のデフレ予算強行が決まれば、景気後退は決定的になるだろう。そうなると本年度下期は、景気回復どころか、雇用悪化、倒産増加、金融機関の破綻などで経済は危機的様相を示すかもしれない。
すでにマーケットはそれを予感し、日経平均株価が18千円台を割込み、長期金利の指標である国際指標銘柄の利回りが1.8%を割っている。