業況の回復は捗々しくないが、人手と設備の不足が進み、製造業の設備投資計画は比較的高い伸び(H26.10.1)
―9月調査「日銀短観」の注目点
【業況判断は駆け込み需要の反動が尾を引き今回もやや悪化】
本日(10/1)公表された9月調査「日銀短観」では、本年度の売上・収益計画や「業況判断」DIなどに示される業況の回復は捗々しくないが、反面で人手と設備の不足が進み、本年度の設備投資は、大企業・中堅企業の製造業で、前回景気回復のピークである04~06年度の実績に近い高い伸びが計画されている。
まず「業況判断」DIからみていくと、大企業製造業では駆け込み需要の反動で落ち込んだ前回(6月調査)より1ポイント回復し、「良い」超13となったが、中堅・中小企業の製造業や各規模非製造業では、前回比更に悪化し、全体では、5ポイント悪化した前回から更に3ポイント悪化して、「良い」超4となった。駆け込み需要の反動は、7~9月期にも尾を引いているようだ。
先行きは、各規模製造業・非製造業でほぼ横這いとなっている。
【製造業の製品在庫がここへ来てやや増加】
駆け込み需要の反動減が7~9月期も尾を引いていることが予想外であったためか、製造業の「製品在庫水準判断」DIの「過大」超は、6月にやや低下したにも拘らず、9月には再び上昇した。
【本年度は売上計画の伸びが大きく低下し、減益に】
本年度の売上計画の伸びは、全体(全規模全産業)で前年比+1.0%と前年度(+5.5%)を大きく下回った。とくに下期の非製造業は前年を-0.3%下回った。また、大企業製造業の本年度輸出計画は、前回調査に比し、上期に-0.2%、下期に-0.5%下方修正され、前年比+1.0%にとどまる。円安にも拘らず、国内生産拠点からの輸出の回復は捗々しくない。
売上計画の伸びが低いため、経常利益の計画も本年度は全規模全産業で前年比-4.0%の減益となり、売上高経常利益率は前年度の4.44%から4.22%に低下する。
概して本年度の業況回復は冴えない。
【本年度の製造業の設備投資計画は前年を大幅に上回る伸び】
以上のように、本年度の業況は冴えないが、設備と人手の不足は、リーマン・ショックの08年以来設備と雇用が抑えられてきたので、ここへきて目立ち始めている。
「生産・営業用設備判断」DIは、各規模非製造業で「不足」超がジリジリ拡大し、また各規模製造業では「過剰」超が徐々に縮小しているため、全体(全規模全産業)でも先行きは-1の「不足」超に転じた。
これを反映し、本年度の設備投資計画(ソフトウェアを含み土地投資を除く)は、製造表で前年比+12.9%(大企業のみでは同+14.4%)の大幅増加となった。非製造業の伸びでは前年比+2.6%にとどまったが、製造業・非製造業の合計は、前回調査から1.3ポイント上方修正され、前年比+6.1%と前年度の伸び(同+5.3%)を上回った。
もっとも、これに金融機関の設備投資計画を加えると、前年比+6.2%と前年度(同+6.2%)比横這いの伸び率となる。金融機関の本年度計画が同+8.7%と著増した前年度(同+25.3%)を下回るためである。
【大企業製造業でも人手不足】
人手不足もジリジリと進んでおり、これまで唯一「過剰」超であった大企業製造業も今回はじめて「不足」超に転じた。また全体(全規模全産業)では、「不足」超-14、先行きは同-17となったが、これは前回景気上昇期のピークに記録した06年12月調査の-12を上回る「不足」超である。
こうした人手不足の傾向が、賃金の上昇圧力となって所得・消費との好循環を生み出すのか、それとも生産の制約要因となって回復を停滞させるのか、今後の景気を左右する需要なポイントとして、注目される。