7~9月期GDP統計が語る今後の日本経済(H25.11.15)
【7~9月期の国内需要の成長寄与度は年率3.7%に達した】
11月14日(木)に公表された7~9月期のGDP統計は、このHPの<月例景気見通し>(2013年11月版)“7~9月期の成長率は外需の減少を主因に一時的に鈍化した模様”で予測した通りの内容であった。
すなわち、7~9月期の実質成長率(年率)は、「純輸出」(外需)の成長寄与度が-1.8%と大きく低下したため、+1.9%と1~3月期(+4.3%)や4~6月期(+3.8%)に比してかなり鈍化した。
しかし、新聞などではあまり指摘されていない注目すべき点について、ここで指摘しておきたい。
まず、7~9月期の国内需要の成長寄与度(年率)は+3.7%に達し、1~3月期(+2.7%)や4~6月期(+3.2%)の国内需要の成長寄与度を上回っていることである。つまり、海外経済の停滞による外需の不振がなければ、国内の成長ポテンシャルは徐々に高まっているような外観を呈しているということだ。
【国内最終需要の伸びを支えたのは公共投資と住宅投資】
しかし、この国内需要の成長ポテンシャルの高まりは、待望の家計消費や企業設備投資の加速によるものではない。
第一に、13兆円に達する昨年度末の補正予算の執行と、消費税率引き上げ前の駆け込み需要によって、住宅投資と公共投資の伸び率が高まったことによるものである。両者を合わせると、成長寄与度は+1.7%に達し、1~3月期(+0.8%)や4~6月期(+0.6%)の2倍以上に達する。
このことは、逆に言うと、13兆円の補正予算が使い尽くされ、また消費税増税前の駆け込みが一巡すると、反動的に落ち込む性格の需要である。これは、日本版「財政の崖」(final cliff)と言ってよい。
【国内需要の伸びを支えた第二の要因は在庫投資】
国内需要の成長寄与度を高めた第二の要因は、在庫投資の成長寄与度が4四半期振りにプラスに転じ、それも+1.4%に達したことである。
どこでそのような大幅な在庫積み増しがあったのかは定かではないが、先行き在庫水準の正常化に伴って、在庫投資は反動減となり、成長率を押し下げる要因となろう。
在庫投資という中間需要を調整してみると、下表の通り、7~9月期の国内の最終需要の成長寄与度は+2.3%となり、1~3月期(+2.8%)や4~6月期(+3.7%)よりも低い。しかも、この中には、前述のように先行き反動減となる公共投資と住宅投資の寄与度も含まれているのである。
【10~12月期と1~3月期は駆け込み消費需要と設備投資の立ち直りが期待できる】
以上のように、7~9月期の国内需要の成長寄与度を高めた二つの要因は、いずれも成長率の基調を高める性格のものではなく、逆に今後の成長鈍化要因となる性格のものである。
今後、10~12月期と明年の1~3月期を展望すると、7~9月期の国内需要を高めた二つの要因は先細りとなるが、代わって消費増税前の駆け込み需要が家計消費で本格化し、伸び率が高まるほか、設備投資の先行指標である機械受注(民需、除船舶・電力)が4~6月期(前期比+6.8%)と7~9月期(同+4.3%)に伸びていることから見て、民間設備投資も持ち直しが期待できる。
もっとも、明年の4~6月期以降については、駆け込み需要の反動と前述の「財政の崖」があるため、一時的にマイナス成長となるであろう。この時、もしアベノミクスの第三の矢、成長戦略に支えられて民間設備投資が本格的に伸びてくれば、再び経済は成長軌道に戻るが、その成否はまだ分からない。
【明年4~6月期以降を決するのは成長戦略の効果とベースアップの大きさ】
設備投資と並んで、来年のベースアップが家計所得を拡大し、消費増税後の消費の立ち直りを促すかどうかも、大切なポイントになる。
その関連でやや気になるのは、7~9月期のGDP統計で、雇用者報酬(実質)が3四半期振りにマイナスとなったことである。明年の4~6月期以降の雇用者報酬(同)の動きは、設備投資と並んで、アベノミクスの成否、すなわち持続的成長の可否を決する。