1〜3月期の5.3%成長には持続性が無い(H17.5.17)

─ 1〜3月期GDP統計の読み方 ─


【1〜3月期は予測通り高目の成長】
   5月17日(火)に公表されたGDP統計によると、本年1〜3月期の実質成長率は前期比+1.3%(年率+5.3%)と、このHPの<月例景気見通し>(2005年5月版)で予測した通り、やや高まった。主因も、<月例景気見通し>(2005年5月版)で予測した通り、個人消費(成長率に対する寄与度+0.7%)と在庫投資(同+0.4%)の増加であり、この二つの重要項目だけで+1.3%成長のうちの+1.1%(寄与率85%)を説明できる。

【04年度の平均成長率はゲタのお陰で前年度並み、実態はゼロ成長】
   また04年度の平均成長率は、+1.9%と前年度(+2.0%)とほぼ等しいプラス成長となった。
   しかし、足取りは大きく違う。
   04年度は、4〜6月期(前期比−0.2%)と7〜9月期(同−0.3%)に2四半期連続のマイナス成長となり、続く10〜12月期(同0.0%)もゼロ成長であった。従って、プラス成長は今回発表になった05年1〜3月期(同+1.3%)だけである。それにも拘らず平均+1.9%の成長となったのは、前年度の各四半期のプラス成長によって、前年度末の04年1〜3月期のGDPが、前年度の平均GDPに対して、既に1.9%高い水準に達していたからである。つまり、04年度は始めからゲタを1.9%はいていたのであり、04年度のGDP平均は、03年度末の04年1〜3月期の水準から少しも上がっていなかった。
   このことは、下の図表1を見れば明瞭であろう。03年度中は、各四半期とも+0.4〜+1.5%のプラス成長をしている。それが04年度に入ると、マイナス成長やゼロ成長に変わり、最後の本年1〜3月期だけが、+1.3%にハネ上がったのである。



【1〜3月期の個人消費増加には所得の裏付けがない】
   問題は、このハネ上がった1〜3月期の成長率が今後も続くかどうかである。続けば、04年度中の足取りは重たくても、05年度には景気再上昇の期待が持てることになる。
   しかし、残念ながらこの高成長の持続性には疑問が残る。
   前述のように、1〜3月期の成長率がハネ上がった主因は、個人消費と在庫投資の増加である。設備投資も増えているが(成長に対する寄与度+0.3%)、設備投資の緩やかな増加傾向は、以前から続いている。
   第1に、個人消費の増加には持続性があるのであろうか。GDP統計と同時に発表された本年1〜3月期の雇用者報酬(図表2参照)は、前期に比べ、名目で−1.1%、実質で−0.6%の減少である。つまり、1〜3月期の消費増加には所得面の裏付けが欠けている。これは<月例景気見通し>(2005年5月版)にも書いたように、災害で落ち込んだ12月の反動と年明け後の急激な寒気到来に伴う一時的な消費性向の上昇によって、1月の消費が異常に伸びたためで、2月と3月の消費は必ずしも確りしていない。



【4〜6月期以降は再び低成長へ】
   また在庫投資の増加は、同じく<月例景気見通し>(2005年5月版)に書いたように、前向きの在庫(自動車)にせよ、後向きの在庫(電子部品・デバイス)にせよ、4〜6月期には、反動的に減少になる性格のものである。
   従って、1〜3月期の成長率をハネ上げる主因となった個人消費と在庫投資の増加には、持続性がない。
   4〜6月期には、その反動が出る可能性がある。その上、今回で3四半期連続で減少した純輸出(図表1参照)も、米国の成長減速が見込まれているため、今後も多くを期待できない。
   結局、企業の高収益を背景とした設備投資の緩やかな増加だけが持続的な支えであり、4〜6月期以降は個人消費と在庫投資の鈍化で再び低成長に戻るのではないだろうか。