1〜3月期ゼロ成長は景気後退の始まり(H15.5.16)


【1〜3月期のゼロ成長は月例景気見通しで予測した通り】
本年1〜3月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比0.0%のゼロ成長と発表された。これはこのHPの5月7日付月例景気見通し(2003年5月版)で予測した通りである。そこでは

「1〜3月期の実質GDPは、純輸出、公共投資、住宅投資がマイナス要因、設備投資がプラス要因となり、全体としては個人消費次第でプラス成長にもマイナス成長にもなりうるゼロ成長近傍の動きとなろう。
しかし仮にプラス成長の場合でも、過大推計のきらいがある10〜12月期の実質GDP(年率2.2%成長)よりは低い成長率であろう。」

と述べたが、純輸出、公共投資、住宅投資の前期比マイナスと、設備投資の前期比プラスは予想通りとなり、民間消費が前期比0.3%のプラスにとどまったので、GDP全体がゼロ成長となった。

【小泉政権の発足以来成長率の趨勢は次第に鈍化傾向】
また昨年10〜12月期の実質GDPも、5月版の月例景気見通しで予想していた通り過大推計が修正され、年率2.2%の成長から年率1.9%の成長に下方修正された。この下方修正が無ければ、本年1〜3月はゼロ成長ではなく、年率−0.8%のマイナス成長である。
この結果、2002年度の平均成長率は+1.6%の成長となったが、これは前年(2001年)度の−1.2%のマイナス成長の反動によるものである。
2001年度のマイナス成長は、小泉内閣が発足した4〜6月期からの3四半期連続のマイナス成長によるものだ。それ以前の1〜3月期を入れた2001暦年の平均成長率は、実は+0.4%のプラス成長なのである。
更に興味深いことには、2000暦年、2001暦年、2002暦年の平均成長率を見ると、+2.8%、+0.4%、0.2%と次第に鈍化している。その先に今回発表になった2003年1〜3月期の0.0%成長があるのだ。

【1〜3月期のゼロ成長は新しい景気後退の始まり】
このように見てくると、小泉政権が発足して以来、成長率は次第に鈍化し、遂に本年1〜3月期にはゼロ成長となった姿が浮かび上がってくる。
2002年度中の推移を見ても同じことが言える。4〜6月期、7〜9月期、10〜12月期、1〜3月期の前期比は、+1.3%、+0.8%、+0.5%、0.0%と期を追って鈍化しているのである。
従って、2002年度は+1.6%成長になったので経済は回復しているという政府のコメントは国民をあざむくものだ。実勢はむしろ、本年1〜3月期から新しい景気後退が始まったと見るべきであろう。このHPの月例景気見通し(2003年5月版)で述べたように、鉱工業生産は本年1月をピークに減少している。
以上は定量的な分析であるが、GDPの項目に沿った定性的な分析によっても、1〜3月期が景気の分岐点であることが分かる。

【内需回復の道筋が見えないまま外需の支えを失った】
2002年度の+1.6%成長を支えたのは、4〜6月期の+1.3%(年率+5.2%)成長であるが、このうち+0.5%は在庫調整一巡の効果、+0.5%は米国景気の一時的底入れに伴なう外需の増加である。在庫調整一巡の効果が消え、米国景気が再び減速すると、日本の成長率は次第に支えを失って鈍化して行った。そして、在庫投資と外需がマイナスに転じた本年1〜3月には、逆にゼロ成長となったのである。
米国景気は、イラク戦争に伴なう不透明感から今年に入って自動車販売、住宅着工、資本財発注などが控えられていたが、4月に入っても鉱工業生産が減少し、失業率が上昇している。
日本国内では製造業設備投資に底入れの気配が出ているが、本年4〜6月期の機械受注見通しが再び大きく減少するなど予断を許さない。
内需回復の筋道が見えないまま外需の支えを失った日本経済の先行きは、楽観できない。