ドクター鈴木経済学博士  
やさしい月例景気見通し
前衆議院議員   鈴木淑夫 2003年12月号

【輸出と輸出関連大企業の設備投資だけで成長】
   日本経済は10年間の長期停滞から脱することなく、今年も暮れようとしています。来年こそは経済の潮目が変わり、明るい展望が開けて来るのでしょうか。
   日本経済は昨年の第2四半期から今年の第3四半期まで、6四半期続けてプラス成長となったので、小泉首相はようやく改革の成果が芽を出してきたと自賛しています。しかし5%台の高い失業率と、物価が下がり続けるデフレが進行しているので、皆様にはプラス成長の実感が無いのではありませんか。
   それもその筈で、成長を引張っているのは輸出と輸出関連大企業の設備投資だけだからです。これらの大企業は、生産の拡大を時間外労働とパートで賄ない、割高な40歳台、50歳台の男子常用雇用を最近まで2年11ヶ月にわたって減らし続けています。しかも本年12月の日銀のアンケート調査に対して、大企業はまだ雇用人員は過剰だと答えています。

【所得の減少を貯蓄率引下げで補う暮し】
   パートは給料が割安のうえ、社会保険料の企業負担もない事が多いので、同じ人数を雇っても人件費は少なくてすみます。ですから日本の雇用者の所得総額は、最近のプラス成長の下でも減っているのです。
   このため国民は、以前よりも貯蓄率を引下げて何とか消費水準を維持していますが、これでは消費の回復はおぼつきません。国内の個人消費や住宅投資が低調で、これに関連した製造業やサービス業の業績が悪く、ここでは設備投資も起こりません。デフレが続く訳です。
   10年間の停滞の間に、6四半期以上連続でプラス成長を記録した時期は、過去にも2回ありました。95〜96年と00年を中心とした時期です。この時は2回とも3%台成長をしています。しかし今回は、政府見通しをみても、本年度が2.1%、来年度が1.8%です。
   同じ連続プラス成長でも、今回の方が勢いが弱いのには二つ理由があります。一つは小泉政権が緊縮財政を続けているからです。もう一つはいま述べた企業のリストラで、勤労者の所得が減っているからです。

【来年度予算では年金不安は消えない】
   来年度も小泉内閣は緊縮予算を続ける構えです。社会保険料引上げや年金課税強化などで、国民負担は4〜5千億円増えますし、年金支給額も物価下落にスライドして減らされます。
   年金改革についても、減少する就業年齢層から保険料を取り、増加する高齢者に給付する賦課方式の社会「保険」という厚生年金の仕組みを変えないで、ただ保険料は年収の18.35%以下、給付は現役世代所得の50%以上と決めても、その実現性を誰も信用しないでしょう。基礎年金の国庫負担引上げに至っては、誰がどんな形で負担するかもうやむやで、典型的な先送りです。
   これでは来年も国民の将来不安は消えないでしょう。輸出と輸出関連大企業の設備投資に引張られた緩やかなプラス成長が続き、高失業率とデフレという重荷を背負った国民の暮しは変らないのではないかと思います。
   雇用と投資の機会を増やす本当の「改革」、つまり規制撤廃、地方分権、年金改革を政官業癒着による抵抗打ち破って実現すべきです。


鈴木淑夫は非議員の立場で来年も日本を立直すために努力します。よいお年をお迎えください。

 

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