ドクター鈴木経済学博士  
やさしい月例景気見通し
民主党衆議院議員 鈴木淑夫 2003年10月号

【景気回復は期待先行、実現はあとずれ】
    「輸出」と輸出関連の大企業製造業の「設備投資」にリードされて景気回復が始まるという期待が生まれ、株価も日経平均で1万円の大台に乗り、東証株価指数も1000を突破しましたが、あれから1ヶ月、株価はその水準で"行きつ戻りつ"の状態です。それというのも、期待ばかりが先行して、実際の景気回復の手応えが今のところあまりないからです。
    上昇が予測されていた8月の生産活動は、実績が出てみると低下しており、上昇は9月から始まるという予測に変っています。このため8月の就業者数は、依然として前年水準を下回っています。
    冷夏の影響で、7月と8月の消費は不振で、夏物の商売を当て込んでいた小売店やレジャー施設が泣かされています。年末迄に入居しないと住宅減税の恩恵に浴せないため、6月頃には住宅着工が一時的に回復しましたが、7月以降は以前の低水準に逆戻りしました。

【大企業製造業の輸出と設備投資には確かな手応え】
    しかし、本年の下期に輸出と設備投資が立直りそうだという期待は、あとずれしていますが本当だと思います。
    米国の景気は、7月からの大型減税の影響もあって、成長率は加速して3%台に乗りました。中国では、5年後の北京オリンピックを目標に、早くも建設ブームの走りが始まっています。
    また90年代のパソコン・ブームの中で苦杯をなめた日本のIT産業は、デジタル家電(薄型テレビ、デジカメ付携帯電話など)の分野で大きく世界をリードし始めました。
    このため、電子部品(デバイスを含む)、電気機械、情報通信機械などの業界では、生産と出荷がはっきりと上昇傾向にあります。米国向け輸出の自動車産業や中国向け輸出の鉄鋼業も立直ってきました。
    これらの産業を中心に、大企業製造業の本年度の設備計画は、前年比+11.1%の大幅増加です(日銀が9月に調べた企業アンケート調査の結果)。

【海外要因と企業努力による回復で小泉政策とは関係ない】
    このように、輸出と設備投資は確かに回復傾向にあり、緩やかな景気回復が期待されているのはもっともな事です。
    しかし、この景気回復の動きは、2年半に及ぶ小泉政権の政策とはまったく関係ありません。米国と中国という海外環境の好転と、大企業製造業の技術開発とリストラという血のにじむような自己努力によるものです。
    しかもリストラのシワは家計に寄っているため、雇用も賃金も好転せず、暮し向きは悪化したままで、個人消費と住宅投資は停滞を続けています。
    これは、家計、中小企業、非製造業、地方経済を置き去りにした、大企業製造業に偏った回復です。
    いま必要なことは、置き去りにされた分野に光を当て、日本経済全体を回復の軌道に乗せることです。自然破壊型の無駄な大型公共事業を直ちに中止し、そこで浮いた財源を使って中小企業と雇用の対策をもっと拡充すること、医療、介護、教育の分野に一般の民間企業が参入出来るようにするなど規制撤廃で国内のビジネス・チャンスを増やすこと、中央が権限を握っている補助金を地方公共団体に一括交付し地域社会の自主的効率的な投資を促すことなど、民主党の「マニフェスト」(政権公約)に沢山書いてある政策が、今こそ必要なのです。


民由合併で万年与党自民党に替る新しい政権受皿政党、民主党が誕生しました。次の総選挙で、政権交替可能な本当の民主主義政治体制を創りましょう。

 

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