ドクター鈴木経済学博士  
やさしい月例景気見通し
自由党衆議院議員 鈴木淑夫 2003年9月号

【米国景気が予想外に強く輸出期待で日本の株価が上昇】

しばらく足踏みをしていた株価がまた上がり始めました。日経平均株価は1万円の大台に乗り、東証株価指数は1000を突破しました。
5月頃から7月始め頃までの株価回復は、日本経済に関する極端に悲観的な見方が後退したためでした。突込み過ぎていた株価は修正されましたが、そこで勢いを失ない、日経平均で1万円を抜けませんでした。
しかし今度の株価回復は、下期から緩やかな景気回復が始まりそうだという期待によるものです。そのような期待が生まれた理由は二つあります。
一つは、米国景気の回復が予想外に強いので、下期に日本の輸出が大きく伸び、景気を引張るのではないかという期待です。今年4〜6月期の米国の成長率は、速報段階の年率2.4%から3.1%に上方修正され、景気の強さに皆驚きました。これは設備投資、住宅投資、個人消費が揃って持ち直して来たためです。

【設備投資の緩やかな回復で電子部品や機械が好転】
日本の景気回復期待を支えるもう一つの動きは、設備投資の立直りです。米国経済の回復につれて日本の輸出が大きく伸びると予想されるため、輸出関連の大企業製造業では業績予想が好転しており、増加する収益(自己資金)を使って設備投資を増やす計画が増えています。この設備投資の増加が、下期の景気を引張るもう一つの要因になるのではないかと期待されています。
以上の二つの理由、つまり輸出と設備投資の増加予想によって、年初来減少気味であった生産活動は、7月以降上昇に転じる予想となっています。回復期待の中身をみると、米国や日本におけるIT(情報技術関係)不況の終焉を反映して、電子部品(半導体、液晶などのディバイス)が目立ち、次いで一般機械、情報通信機械など輸出や設備投資に関連した資本財やその部品の増加予想もあります。

【個人、中小企業、非製造業、地方を置き去りにした回復】
しかし、こうした輸出関連の大企業製造業を中心とした回復が、国内経済全般に浸透する動きはまだ見られません。そもそも製造業は、日本経済全体(例えばGDP)の4分の1に過ぎないのです。
そのうえ大企業は、割高につく40才台、50才台の男子常用雇用をリストラし、社会保険料負担もなく賃金も割安な若年や女性の臨時雇用に切換える動きを続けています。このため、臨時雇用を含む雇用者全体は少しずつ増え始めているのですが、常用雇用は減り続けています。それによって、雇用者は増えても人件費全体は増えないようにしているのです。だからこそ大企業の収益が、輸出や生産の増加につれて回復し始めたのだとも言えます。
このことを経済全体からみると、輸出や生産の回復につれて企業収益が増え始めても、人件費、つまり個人の所得は増えず、消費や住宅投資が回復しないのだということです。これは、個人、中小企業、非製造業、地方経済を置き去りにした、大企業製造業中心の緩やかな回復ということです。
私は、置き去りにされている分野にビジネス・チャンスを増やす規制撤廃や大都市再開発に今こそ力を入れて、バランスのとれた確実な回復を図るべきだと思います。


私は民由合併後の新しい民主党において、東京ブロックの比例候補として活動し、万年与党自民党に代る新しい改革政権の樹立を目指します。

 

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