ドクター鈴木経済学博士  
やさしい月例景気見通し
自由党衆議院議員 鈴木淑夫 2003年6月号

【「りそな」への税金投入2兆円と生命保険予定利率引下げ】
この1ヶ月の間に、金融面で二つの注目すべき動きがありました。いずれも私達の暮しに直結した動きです。
一つは、旧都市銀行グループの一角、「りそな銀行」の自己資本比率が2%近くまで落込んでいることが判明し、このままでは業務を続けられなくなったことです。自己資本比率は国内業務だけを行う銀行は4%以上、国際業務も行う銀行は8%以上なければいけないと決まっていますから、普通なら「りそな銀行」に業務停止命令が出ても不思議ではありません。
しかし、「りそな銀行」と言えば皆様方の中にもお取引のある方が多い大銀行ですから、これを潰すとなると社会的影響は大きくなります。そこで政府は、2兆円の公的資本(私達の税金)を注入して自己資本比率を10%強に引上げ、業務を存続させることにしました。事実上の国有化です。
もう一つは、生命保険会社が保険を掛けた皆様方と約束した「予定利率」(従って保険金の予定支払額)を、皆様方保険者の9割以上が賛成した場合には引下げることが出来るという法案が、政府から国会に提出されました。生命保険会社が倒産するよりは、引下げに応じて存続させた方が保険者も得だろうと言うのです。

【政府と経営者の責任を明確にしない処理に反対】
この二つのケースは、経済の停滞が長引いているのに、小泉政権が需要喚起策を採らないで低金利や株安を放置しているために起きたものです。「りそな銀行」も生命保険会社も、低金利に伴なう逆鞘と株安に伴なう評価損で赤字が累積し、自己資本が減ったり、保険金を支払う責任準備金を契約通り積むことが困難になっているのです。これは政策の責任です。
その上、バブルに浮かれて作った不良債権の負担(りそな銀行)や高利率契約の負担(生命保険会社)が、経営を圧迫している点も共通しています。これは経営者の責任です。
政府の責任と経営者の責任はこのように明らかですが、それによって損害を受けるのは納税者であり、生命保険を掛けている国民です。私は政府や経営者の責任の所在を明らかにしないこの二つのやり方に、国会で反対しています。

【海外の悪化と国内の停滞でデフレはまだ続く】
金融面で二つの出来事が起きている間にも、景気の方はジリジリと悪化しています。経済成長率はこの一年間低下を続けていましたが、本年1〜3月期には遂にゼロ成長になってしまいました。
イラク戦争に伴なう先行き不安から、米国の景気が1月頃から停滞し、対米輸出の多いアジアにもその影響が出ています。そのうえ新型肺炎の影響で4月頃から中国の経済にも異変が起きています。
このため日本の輸出も今年に入ってマイナスに転じ、4月も減りました。生産活動も本年1月をピークに4月迄低下しています。失業者は3月、4月と増え続けています。
国内経済では、製造業の設備投資に下げ止まりの気配が出ていたのですが、海外の輸出環境悪化のせいでしょうか、4〜6月の機械の発注が再び減る予想となっています。国内経済の力で景気が底を打ち、デフレが止まる兆しは今のところありません。
私であれば、ここは設備投資を刺激するため、思い切った規制緩和と減税を実施すべき時だと判断するのですが。



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