ドクター鈴木経済学博士  
やさしい月例景気見通し
自由党衆議院議員 鈴木淑夫 2003年5月号

【海外経済の悪化で生産活動は再び低下傾向】
イラク戦争と株価下落で日本経済の先行きに不安が広がっていましたが、ここへ来て更に新型流行性肺炎(SARS)の経済的影響が心配され始めました。中国における日本企業の工場や事務所の活動低下、中国を中心とするアジアの観光、生産、貿易の減少などによって、緩やかな拡大を続けていたアジア経済全体の景気が悪くなる恐れが出てきました。
米国経済では既にイラク戦争の悪影響が出ています。先行き不安から大型消費、住宅購入、設備投資などが控えられ、小売の売上高や資本財の注文が落ち始めました。4月の失業率は6.0%に上昇しました。
これらの海外環境の悪化が日本に響き始め、1〜3月期の輸出は減少に転じました。このため下げ止まりの兆があった日本の生産活動も2月と3月に続落したうえ4月も低下すると予想されています。そうなると3ヶ月連続の生産低下となりますので、失業の増加や企業業績の悪化が心配されます。

【小泉改革が株価と景気の悪循環を促進している】
このような情勢の下で株価が更に下落して20年来の安値を更新しています。銀行や生命保険会社はもとより、取引先の株式を大量に保有する大企業も、本業の利益が株式の評価損で消し飛んでしまうので困っています。その結果、値下がりする株式の保有を減らそうと売却を急ぎ、それがまた株価を崩すという悪循環に陥っています。
本来であれば政府がこの悪循環を断つ手を打つべきですが、有効な手段を何一つ打てないでいます。それどころか、銀行の株式保有制限の実施を急いだり、企業が政府に返上する厚生年金基金の株式換金を義務付けたりして、むしろ株式の売却を促進する逆の政策を採っています。要するに小泉改革に総合的戦略が無いのです。
私は新著の『改革と景気は両立する』(本年1月刊行)の中で強調しているように、長期保有株式の譲渡益課税を廃止し、配当課税を引下げる一方、銀行や企業の株式売却を誘う政策を停止すべきだと主張しています。

【私なら民間投資促進型の規制撤廃と減税をやる】
しかし根本的には、国内の需要を喚起する構造改革を推進し、景気を立て直すならば、企業経営は改善し、株価も回復するのです。暮しも良くなります。これが私の新著の基本的な主張であり、政治の世界で私が実現したいと努力していることです。
日本経済を見ると、この困難の中でも、民間には力強い立直りの兆があります。例えば、世界最高の技術を誇る日本の輸出産業を中心に、中小企業も含め、製造業全体としての設備投資に回復の気配が出始めています。何しろ設備投資は、最近6年間も停滞していたので、さすがにここへ来て新技術、新製品の製造設備に対するニーズが高まっているのです。
また国内の少子高齢化に伴ない、保育、教育、医療、介護、農業などの事業機会は多様化して増えており、ここへの株式会社参入禁止を全国規模で解除すれば、ここでも民間投資が盛んになるでしょう。小泉内閣のように構造特区で部分的に規制緩和をするような悠長な事を言っている時ではありません。
民間投資促進型の規制撤廃と減税こそが、いま日本を立て直す改革の決め手だと思います。株式売却を促進するような企業・銀行いじめでは、本当の改革は出来ません。




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鈴木淑夫の新著『改革と景気は両立する』
定価税込 1,000円   大修館書店刊  2003年1月

 

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