ドクター鈴木経済学博士  
やさしい月例景気見通し
自由党衆議院議員 鈴木淑夫 2003年4月号

【イラク戦争と株価低迷が気分を暗くしている】
   新年度に入り東京の桜は満開となりましたが、経済の方は依然としてすっきりしません。
 第1にイラク戦争が予想外に長引くのではないかという心配が出てきたことです。1ヶ月たっても決着の目途が立たないようであれば、投資や消費を手控えて様子を見ようという期間がそれだけ長引きますから、米国、ヨーロッパ、日本などの景気に悪影響が出てきます。原油価格も高どまりするでしょう。
 第2に国内では、株価が20年前の水準まで下落して期末(3月31日)を越えたことです。銀行、生命保険会社、株式を大量に保有する大企業は、株価下落に伴なう多額の評価損を平成14年度の決算に計上しなければなりません。倒産する生命保険会社が出て、保険を掛けている庶民が泣くような事が起きなければよいがと心配です。期末に金融危機こそ起きませんでしたが、水面下では静かに危機が進んでいるのです。

【生産活動の低下と雇用悪化が止まる兆はある】
 このように経済の先行きには心配なことがいろいろあるため気分は暗いのですが、現状はと言えば、ここへ来て一段と悪化しているわけではありません。あまり悲観的にならない方がよいと思います。
 生産活動は昨年の8月頃をピークに少し弱くなっていたのですが、年明け後は下げ止っています。女性の臨時雇用が増えているため、戦後最高水準にあった失業率も少し下がりました。もっとも、男性の常用雇用は依然として厳しいままです。
 昨年6月に出された政府の「景気底入れ」宣言は、米国景気の立直りに伴なう日本の輸出増加を当てにしたものでしたから、米国景気の失速と共に日本の「景気底入れ」も空振りに終りました。
 外国を当てにするのではなく、日本自身が国内需要を回復させる政策、それも改革と両立する景気対策を採れというのが私の主張です。

【製造業の設備投資回復の芽を育てなければ】  そのような観点から調べてみると、民間経済の動きの中に一つだけ期待のできる兆候があります。
 それは、技術水準で世界をリードしている日本の電子電気機械工業や精密機械工業などを中心に、製造業の設備投資が3年振りに回復する兆しを見せていることです。
 設備の増設、更新や工場の新設のためには、まず新しい機械を注文しなければなりませんが、国内の製造業から機械メーカーへの注文が3年振りに増え始めたのです。
 また、日本銀行が3月に行ったアンケート調査によれば、2年連続して減ってきた製造業の設備投資計画が、平成15年度には3年振りに増えると出ています。これは設備過剰が少しずつ薄れ、また最新技術を導入する必要性が高まってきたところに、ようやく企業収益もリストラで最悪期を脱してきたためだと思われます。
 しかしイラク情勢の泥沼化や小泉緊縮政策の持続は、せっかく出てきたこの立直りの芽をつんでしまいます。いまこそ改革と両立する景気対策でこの芽を育てなければなりません。小泉政権は一体どうする積りなのでしょう。



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