ドクター鈴木経済学博士  
やさしい月例景気見通し
自由党衆議院議員 鈴木淑夫 2003年3月号

【リストラで大企業は増益、家計と商店街は沈滞】
   3月に入って陽光には春の訪れを感じるようになりましたが、日本経済の春はまだ遠いようです。1月にはまた失業者が増加し、失業率は戦後最悪の5.5%に達しました。
   企業は収益力を高めるためのリストラに一所懸命で、割高の40才台、50才台の男子常用雇用を整理し、若年や女子の臨時雇用と時間外勤務で企業活動を賄う傾向を強めています。日本の伝統である終身雇用制と年功序列賃金が少しずつ崩れ、一年中新規雇用を続け、能率賃金の色彩を徐々に強めています。
   雇用と賃金を圧縮しているため、今月で終わる平成14年度の大企業(金融機関を除く)の決算は、売上高の伸びがほぼ横這いなのに、利益は前期の減益から一転して大幅な増益に転じる見通しです。しかしその陰には、リストラによる失業やボーナスが無くなって困っている家計があります。それが個人消費や住宅投資を弱くしており、商店街を沈滞させているのです。

【政策転換を拒否し続ける小泉内閣】
   企業が増益に転じれば、普通は株価が上昇し始め、設備投資も底を打って上がり始めます。そこから景気が回復し、雇用も賃金も好転するので、ワンテンポ遅れても家計にも明るさが差してくるものです。
   しかし今回は、株価はバブル崩壊後の最安値を3月7日(金)に更新するような有様で極端に低迷しており、設備投資の先行きを示す民間からの機械受注にも回復の兆しが見られません。
   その最大の理由は、次の二つの原因で投資家も企業も日本経済の将来に自信が持てないからです。
   一つは小泉改革です。2〜3年改革の痛みに耐えれば、日本経済は持続的成長軌道に乗ると言っていましたが、3年目の今年になっても景気は停滞したままで、明るい見通しはまったく立っていません。徹底した規制撤廃や政府事業の民間開放でビジネス・チャンスを増やしたり、大都市再開発投資などで需要を喚起すれば、改革と同時に景気も回復し、デフレを克服できるのに、小泉内閣はそのような政策転換を拒否し続けています。これでは将来に希望が持てません。

【何が起きるか分からないイラク情勢】
   もう一つはイラク情勢です。サダム・フセインが戦争を回避して亡命するとか、不幸にして戦争が起きる場合でも2〜3週間の短期間で終われば、原油価格は直ぐに値下がりし、世界経済への打撃は小さく、イラク復興需要も出て、先行きも明るくなります。
   しかし戦争が長期化して油田の設備が破壊されたり、世界中でテロが多発したりすれば、原油価格の高騰や社会不安の発生で経済の悪化が起こります。戦争が起こらない場合でも、イラクの国連査察がどんどん長期化して行くと、米国の財政負担の増加を始め世界情勢を巡る不安材料が増大して行きます。
   このように何が起きるか分からない事を考えると、投資家も企業も、イラク情勢がはっきりするまでは様子を見ようということになり、弱気が支配しているのです。
   残念な事ですが、日本の政策転換とイラク情勢の決着迄は、日本経済に春は訪れないと思います。


好評発売中!!事務所では著者署名入り本を用意!

鈴木淑夫の新著『改革と景気は両立する』
定価税込 1,000円   大修館書店刊  2003年1月

 

[戻る]