ドクター鈴木経済学博士  
やさしい月例景気見通し
自由党衆議院議員 鈴木淑夫 2002年12月号



【生産は頭を打ち男子失業率が急上昇】
「景気底入れ」宣言の根拠となっていた生産活動の回復は、完全に頭を打ってしまいました。8月から年末の12月まで、生産活動は横這いで推移する見込みです。その先の2003年に、再び景気後退が待っていたら大変です。
このような状況に対処するため、企業は人件費のかさむ40才台、50才台の男性世帯主の常用雇用を整理し、臨時雇用や時間外労働で企業活動を維持する傾向を強めています。その結果、失業率は戦後最高の5.5%に達していますが、とくに男子失業率はこのところ急上昇しており、5.9%になりました。年末に向い、苦しいご家庭が増えているのではないかと胸が痛みます。

【夏の消費回復は一時的で再び冷え込み】
生産活動に不安が生まれている原因は、米国の成長減速に伴って日本の輸出増加が鈍ってきたためです。このような時に国内の需要が立直ってくれればよいのですが、いまのところその見込みはありません。
個人消費は、夏に暑い日が続き、秋口にはデジカメ付き携帯電話に人気が集まったりして、7〜9月期に少し増えたのですが、10月以降はさっぱりです。もともと雇用悪化やボーナス減少で所得が増えていないのですから、夏に消費が少し増えれば秋から冬にその反動で落ち込むのは当然でしょう。

【投資活動は萎縮したまま】
このような時に投資活動が立ち直ればよいのですが、こちらも回復の兆はありません。企業は先行きに不安を抱いているので、設備投資は減り続けています。家計も不安なので住宅投資は弱いままです。小泉流緊縮財政で公共投資も落込んでいます。
10〜12月期や来年1〜3月期には、再びマイナス成長に陥るのではないかと心配されています。

【来年1月には前年並みの補正予算】
このような深刻な事態に直面し、小泉首相はとうとう国債発行枠30兆円の公約を放棄し、来年に入ったら5.5兆円から6兆円程度の補正予算を組むことになりました。
もっとも、このうち2.5兆円から3兆円は、不況に伴う税収の不足を補うものですから、新たな需要の追加にはなりません。残りの3兆円が需要刺激の効果を持ちますが、去年も同じ時期に3兆円の補正予算で需要を刺激しましたから、超緊縮予算から去年並みの緊縮予算に変ったというところです。
小泉首相は、不良債権処理や財政赤字削減を最優先し、その結果経済の停滞が3年間ぐらい続いても我慢しろという姿勢を変えていません。私は構造改革に沿った需要刺激策(将来の行政改革に伴なう歳出削減を財源とする所得減税、法人減税、大都市再開発投資)によって経済を回復させた方が、中期的に見て、不良債権処理や財政赤字削減 の近道になると思います。

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