ドクター鈴木経済学博士  
やさしい月例景気見通し
自由党衆議院議員 鈴木淑夫 2002年11月号



【生産活動の回復が止まり、冬に向って不安な状況】
 政府の「景気底入れ」宣言から半年が過ぎましたが、宣言の根拠となっていた製造業の生産活動の回復が9月頃から足踏みを始めました。これは、回復を引張っていた輸出の伸びが、米国経済の回復減速に伴って止ってきたからです。
 これまでの生産回復は、主に時間外労働や臨時雇用に支えられてきたので、この5ヶ月間常用雇用は増えず、失業率は5.4%の高水準に張り付いたままです。その上、早くも回復が止ってきたのですから、冬に向って雇用情勢は一段と厳しくなることが心配されます。

【雇用と賃金が抑えられ消費は伸びられない】
 企業の経営者は先行きに自信が持てないため、これ迄の生産増加の時期に雇用を増やさず、夏のボーナスも去年より減らしました。このため個人の所得は減っています。
 この夏は暑かったので8月は夏物商品(エアコン、衣料、飲料など)が売れ、9月はデジタル・カメラ付の携帯電話が若い人によく売れました。しかし、全体としてみると、所得が減っている時に消費がそこそこ増えたので貯蓄にくい込んでおり、消費増加は長続きしないでしょう。雇用と賃金が悪化している時に個人消費が本格的に立直るのは難しいと思います。

【設備投資を励ます政策が必要な時】
 一つ明るい話題があります。1年半にわたって減り続けてきた企業の設備投資が、ようやく下げ止ってきたことです。機械や建設工事に対する企業の発注も、もうこれ以上は落ちない所まで来た感じです。
 このような時に設備投資を励ますような政策を打てば、民間がリードする景気回復が始まるのです。しかし残念なことに、小泉政権の動きは鈍いと思います。
 まず補正予算を国会に提出するとしても、来年になってからです。それも需要を刺激する支出拡大ではないようです。不況で税収が2兆円以上も落込んでいるため、このままでは支出を2兆円以上カットしなければなりません。このような不況の悪循環を防ぐために、30兆円枠を突破して国債を発行し、補正予算を組むようです。

【不良債権処理は需要刺激策と共に!】
 しかしこれだけでは、当初予算の支出規模を維持するだけの補正予算となり、去年より3兆円少ない支出規模はそのままです。去年と同じ程度にするためには、2兆円プラス3兆円、すなわち5兆円強の補正予算が必要ですが、果してそうなるでしょうか。
 税金については1兆円強の減税をすると言っています。しかし来年に向って医療費個人負担、健康保険料、介護保険料、雇用保険料の引上げと基礎年金の引下げで3兆円強の国民負担が増えることを考えると、3兆円以上の減税をしなければ、需要刺激にはなりません。
 また不良債権の処理についても、10年間の経済停滞で真面目に努力している中小企業の借金が不良債権になっている時に、需要刺激の補正予算と減税を実施しないで不良債権の処理だけを急げば、中小企業の倒産と失業が増えるばかりです。
 小泉首相が需要刺激を重視する政策に転換すればよいのですが。

鈴木淑夫代議士、TV出演のお知らせ
11月8日(金)20:00〜21:00 テレビ東京(12ch)
「クイズ赤恥青恥」に鈴木淑夫代議士と支援者の方々が出演いたします。 是非ご覧下さい!


[戻る]