ドクター鈴木経済学博士  
やさしい月例景気見通し
自由党衆議院議員 鈴木淑夫 2002年9月号



[株価は20年前の水準まで低下]
日本の株価は、小泉政権の下で少しずつ下っていましたが、9月に入って急落し、とうとうバブル発生以前の1980年代前半の水準まで下ってしまいました。これは、バブル崩壊以来の最安値の記録更新であることは言うまでもありません。株をお持ちの方は勿論のこと、お持ちでない方も、一体日本経済の前途に何が起ろうとしているのか、ご心配ではないでしょうか。
8月30日に政府が発表した統計によると、日本経済は昨年の4〜6月期から今年の1〜3月期まで4四半期連続してマイナス成長を続け、平成13年度の平均成長率はマイナス1.9%に達したそうです。これは第2次大戦後一度も経験したことのないマイナス成長の長さと大きさです。

[国民の暮しの改善につながる動きはない]
幸い今年の4〜6月期は、輸出が伸びたお陰でプラス0.6%(年率2.6%)の成長になりました。しかし、米国やドイツなどの景気が予想外に弱くなっているため、6月と7月の日本の輸出は増加の勢いが鈍化しています。このため、輸出に支えられていた生産活動も、6月と7月には少し減少しました。
企業経営者は、経済の見通しに不安があるため、常用工を増やさずに主として時間外労働の延長や臨時工の一時的雇用で対応し、夏のボーナスも昨年以下に抑えています。このため、失業率は5.4%の高水準で横這っており、賃金は前年水準を下回ったままです。国民の暮しの改善につながるような動きは、政府の「景気底入れ宣言」から4ヵ月たった今も、まだ見当りません。

[小泉首相の「先行減税」に株価は無反応]

このような時には、輸出の支えが弱くなっても大丈夫なように、国内の個人消費や住宅投資や設備投資を刺激する政策を打ち出すのが普通です。
しかし小泉政権は、本年度の国債発行額を4月から実施に移した当初予算の30兆円以上には増やさないと公約しています。従って、追加的な国債発行を財源として、個人消費などを刺激する補正予算を秋に組んで、景気を刺激することが出来ないのです。
そこで小泉首相は、来年度の「先行減税」を検討するように指示しました。しかし新聞報道によると、先行して実施される減税は、3年を限度とする開発・投資減税が中心で、その財源は配偶者控除など人的控除の縮小・廃止による所得税の恒久的増税や消費税の免税売上高を年間3千万円から1千万円に引下げることによる零細業者の恒久的増税です。
3年間の一時的減税のあとに恒久的増税が来るうえ、減税は企業、増税は個人と零細業者に偏っているので、この「先行減税」に株価はまったく反応せず、始に述べた通り、逆に下っています。

[将来の歳出削減を財源に先行減税をしよう]
本来であれば、将来の行政改革(規制撤廃や地方分権)による歳出削減を財源として、いま所得税と法人税の恒久的減税を実施するのが「先行減税」だと思います。
また、国債発行の削減は行政改革による歳出削減と景気回復による税の自然増収によって5年程度の間に実現することとし、目先の1〜2年間はたとえ国債発行が増えても構造改革に沿った減税などを思いきって実施すべきだと思います。
小泉首相がこれらの事を受け入れて、早く政策転換をしてくれればよいのですが…。



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