祝!W杯決勝トーナメント進出!!ドクター鈴木経済学博士  
やさしい月例景気見通し
自由党衆議院議員 鈴木淑夫 2002年6月号



− ようやく谷底についた日本の景気−

 去年1年間、急な坂道を転がり落ちるように悪化してきた日本の景気は、今年に入ってようやく谷底についたようです。製造業の生産活動は16%も落ちた後、今年の2月、3月、4月と3ヶ月連続して上向きました。四半期ベースで見ると、実に5四半期振りのプラスです。マイナス成長を続けていた経済も、今年の1〜3月期には4四半期振りのプラス成長になりました。
 政府は喜んで「景気底入れ」宣言を出しました。しかし「底入れ」という言葉は、ようやく「谷底についた」という意味で、これからは回復していくという意味ではありません。谷底からの上り口はまだ全然見えないのが現状です。

― 企業は慎重で常用雇用や新規設備を増やさない ―

 今年の3月で終わった平成13年度は−1.3%成長と戦後最大のマイナス成長を記録したので、この谷底は恐しく深いところに在ります。失業率が5.2%という高水準で横這っている事からもお分かりでしょう。生産活動が3ヶ月連続で上向いたといっても、橋本政権の増税策でマイナス成長に陥った平成10年のボトムにも達していないのです。 回復の目途が立たないので企業は慎重です。生産が増加しても、既存の設備の下で時間外労働を増やしたり、パートタイマーを増やしたりして生産増加を賄い、常用雇用や新規設備を増やす企業は殆どありません。ですから設備投資や個人消費の回復によって、谷底から這い上がる道筋が見えないのです。

− 輸出頼みの他力本願では回復への道は開けない −

 このため株式市場も軟弱で、日経平均は今日1万1千円台を再び割りました。生産増加もプラス成長も、米国景気の回復に伴なう輸出の増加という他力本願に依存していますが、ここへ来て米国の景気回復は一服気味で株価も下がっています。その上、日本の輸出が伸び始めた為、一時1ドル=135円前後であった円相場は、今125円前後と円高になって来ました。 米国の景気一服と円高の影響は、今年後半の日本の輸出に現れ、他力本願の日本の景気底入れに影が差してくる心配があります。

― 将来の行革=歳出削減を財源にいま大幅減税を ー

   日本の輸出が回復した時、昔のように輸出産業の常用雇用と設備投資が大規模に誘発されれば、他力本願の回復が自律的な回復を呼び起こすのですが、いまはそうは行きません。輸出産業はグローバルに工場を展開しているので、国内の雇用と設備を増やすとは限らないからです。ですから今必要なのは、自力本願の景気対策です。それも日本の構造改革の方向に沿った政策でなければなりません。私は、将来の行政改革にともなう歳出削減を財源として、いま法人税と所得税の大幅減税をすべきだと主張しています。
 しかし小泉内閣は、将来の財源では駄目で、来年度の増税と一体の小規模な減税を来年1月から実施する方針のようです。将来の行政改革に自信がないのでしょうか。日本のためには残念な事です。

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