ドクター鈴木経済学博士  
やさしい月例景気見通し
自由党衆議院議員 鈴木淑夫 2002年4月号



− 景気の悪化は確かに止まってきた −

景気に“底打ち感”が出てきたといわれていますが、本当でしょうか。

経済産業省が発表している製造業の生産活動水準を見ると、去年の始から低下し続いていたのが、今年に入って確かに下げ止まって来ました。日銀のアンケート調査でも、この1年半ほどは経営が悪化していると答える企業が毎回増えつづけていましたが、今年の3月調査では増えるのが止まり、横這いになりました。

  この原因は二つあります。一つは、一昨年秋頃から需要が減って過剰在庫が溜まってしまったために、需要以下に生産を落として在庫を減らしていた企業が多かったのですが、ようやく過剰在庫が減ってきたので、生産を需要よりは少なくするのをやめた企業が出てきたのです。もう一つは、米国の景気が回復し始めた為に、今年に入って日本の輸出が増え始め、情報部品などの輸出産業で生産や業況が上向き始めたのです。

― 下げ止まったとしても大不況の水準 ―

しかし生産活動がようやく下げ止まってきたと言っても、この水準は10年以上も前の1980年代後半の水準です。ですから、人も設備も遊んでいる大不況の状態で、完全失業者数が357万人もいて、失業率は5.3%と戦後最高の水準です。企業収益もむろん最低ですから、給料のベースアップもボーナスもゼロ。それでも雇ってもらっていればラッキーで、リストラや会社倒産の憂き目にあうリスクは高いまま続いています。

昨年4〜6月期から10〜12月期まで3四半期続けて「マイナス成長」を続けてきた日本経済が、今年の1〜3月期には何とか下げ止まって「ゼロ成長」になるかどうかという程度の情けない話なのです。

− 回復の見通しはまだ立たない −

それと言うのも、好材料は前述した在庫減らしの進展と輸出回復だけで、あとの需要はまったく立直りの兆がないからです。

個人消費は雇用と賃金が悪化したままですから立直る事が出来ません。企業収益が低水準なので設備拡大に乗り出す企業も殆どなく、設備投資は減り続けています。設備投資の先行きを示す機械受注も落ちつづけているので、本年下期に設備投資が立直る見通しはありません。

財政支出は“小泉改革”の下で減り続け、減税政策もないので、政策面からも景気の足は引っ張られたままです。

規制撤廃でビジネス・チャンスを増やすとか、行政改革による歳出削減を財源とする減税で民間のやる気を起こすというような「前向きの構造改革」が行われない限り、残念ながら持続的な景気回復の道は開けないでしょう。

― 油断してないで慎重に ー

  マスコミは景気が底を打って今にも上がり始めるような報道をするかも知れませんが、現実はもっと厳しい状態です。不況の底をしばらくは這って行くのだと考え、経営面でも暮らしの設計でも油断しないで慎重にして下さい。一時回復した株価が又ダラダラ下がっているのも、先行きにまだ明るさが出ていない証拠だと思った方がよいと思います。今の“小泉改革”では、輸出という他力本願以外に希望はもてません。

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